みらいロボットの夢
エピソード7 第1 話 危機一髪!

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   今川が、何か言い返そうとした時だった。 何者かが音を立てずに背後から忍び寄ると、今川の口に、ハンカチを押し当てた。 今川はだんだん、意識が遠のくのを感じた。 しばらくして、物音で目を覚ますと、 今川は、廃墟のような場所に閉じ込められていた。 「どうやら、気がついたみたいね」    透き通るような若い女性の声に驚き、 声が聞こえた方を見ると、血液オゾンバイタル療法を今川に施したあの女医が仁王立ちしていた。 「ここから出してくれ!」    今川は、からだをロープで柱にくくりつけられていることに気づいて 縄をほどこうとしてもがいたが、もがけばもがくほど、ロープがからだに食い込んだ。 「おとなしくしていた方が賢明ですよ。 言っておきますが、どんなに、さけんでも、誰も助けには来ませんから」    女医が告げた。 「いったい、あんたたちは何が目的なんだ? それに、押田はどこだ? 」    今川は周囲を見渡した。 どうやら、ここに連れて来られたのは今川ひとりだけらしい。 「他人のことよりも、ご自分の身を心配なさった方が良いのではありませんか? 」    女医が言った。 「押田は友だちだ。友だちが、ピンチの時に見捨てることは出来ない」    今川が答えた。  今川には、友だちと呼べる存在が少ない。 だからこそ、押田の友情は大事だ。 「ピンチなのは、今のあなたではないですか? 」    女医が言った。 「ここから出してくれないか?  私が戻らなければ、会社の者が心配する」    今川が頭を下げた。 「ごめんなさいね。私にそんな権限はありません」    女医が告げた。 「とにかく、縄をほどいてくれないか? 」   「上司が戻り次第、相談します」   「上司は、いつ、戻るんだ? 」 「いつになるかわかりませんが、必ず、戻って来ます」 「私の名前は、今川空雅だ。君の名前は? 」    今川は歩み寄りの姿勢をみせた。 「私の名はフィンです」   女医が答えた。 「フィン。君は、押田に雇われているのかい? 」    今川が訊ねた。  もし、フィンが、押田の部下だったら、 押田もフィンたちの仲間ということになる。 ひさしぶりに会った旧友に 裏切られたとは思いたくなかった。 「あの人は、我々のことをよく知りません。 うまい儲け話に乗っただけです」    フィンの答えを聞いて、今川は胸をなでおろした。 「フィン。こいつに、何もかも話したのか? 」    U・ツゥバイコフが突然、姿を現したかと思うと、 次の瞬間、フィンに襲いかかってきた。 「何も話していません。命令にはありませんでしたから」    フィンが答えた。 「こいつから採取した血液はどこにやった?  おまえが持ち去ったことを知らないとでも思ったか?  こいつの血液を持ち出すことは任務ではないはずだ」    U・ツゥバイコフが、フィンに訊ねた。 「Dr.ナイジェルの命令で、 スターチャイルドを捜すためです」    フィンが答えた。 「スターチャイルドはもう、この世にはいないと言っただろう?  まだ、あの老いぼれとつるんでいたのか?  あれほど、手を切れと言ったのに。 言うことを聞かないやつはこうしてやる」    U・ツゥバイコフは、フィンを地面につき飛ばした後、 その上に馬乗りになると、何度もなぐった。 「お許しください」    フィンは、U・ツゥバイコフの攻撃を防御するのが精一杯で、 抵抗出来ない状態にいた。 「おい、やめないか!」    今川は、ただならぬ雰囲気を察して大声でさけんだ。 「部外者は、黙って見ていやがれ!」  U・ツゥバイコフが何を思ったか、バケツの中の水を フィンに向かって勢い良くぶちまけた。 「うああ!」    フィンは悲鳴に近い声を上げると、U・ツゥバイコフの股間を蹴り上げた。 「てめぇ、何しやがる! 」    股間を押さえながらのたうちまわる U・ツゥバイコフの声が、その場に響き渡った。 「ウラジミール。そのザマは何なの?  ロシアの暴れ牛と聞いてあきれるわね」    ヒールの音が背後で止まったため、驚いてふり返ると、 今川の背後に、シン・ヤンミョンが仁王立ちしていた。 「ヤンミョン姉さん。こいつは掟にそむいた。 罰を受けて当然じゃないか? 」    U・ツゥバイコフが訴えた。 「どうして、おまえは、いつも、そうなの?  暴力からは何も生まれないと、何度、言ったらわかるのかしら? 」    シン・ヤンミョンが、U・ツゥバイコフに詰め寄った。 「フィンは、いつから、反抗的になったのだ?  吾輩に服従するようプログラミングされているはずだ」    U・ツゥバイコフが舌打ちした。 「フィンは、おまえのおもちゃじゃない。 おまえの命令に従っていたのは、組織のためで、おまえなんかのためじゃない」    シン・ヤンミョンが言い放った。 「あの、お取込み中、すみません」    今川が小声で言った。 すると、シン・ヤンミョンが、今川の方を向いた。 「捕らえた男って、今川社長のことだったのですか!」    シン・ヤンミョンが驚いた顔で言った。 「こいつは、Mr.押田の友人で、ビジネスの邪魔をしようとしたから捕らえたのだが、 姉さんの知り合いだったのか? 」    U・ツゥバイコフが、シン・ヤンミョンに説明した。 「気がつかなかった?  彼こそ、捜していたスターチャイルドなのよ」    シン・ヤンミョンが、今川を指差すと言った。 「こいつが、マヤの双子の兄だって?  こんな偶然あるのかよ! あれだけ捜しても見つからなかったのに、 こんなに近くにいたとはさあ」   U・ツゥバイコフが訝し気な表情で言った。 「あなたの脳みそが、ヒューマノイド以下ということが、これではっきりしたわね」    シン・ヤンミョンがあざ笑った。 「仕方がないだろう。フィンは、吾輩よりもマヤをよく知っている。 赤ん坊のころの写真だけでは見分けがつかん」   U・ツゥバイコフが決まり悪そうに言った。 「あなたがたは、さっきから、いったい、何の話をしているのですか?  私に、双子の妹など存在しません。 物心つく前、両親が、交通事故で急死したため、孤児院に預けられたんです」   今川が反論した。 「もしかして、何も知らないのですか? 」    シン・ヤンミョンが驚いた顔で訊き返すと、今川がうなづいた。 「すべては、Mr.石川の裏切りのせいだ」   U・ツゥバイコフがため息交じりに言った。 「それはどういう意味ですか? 」    今川が、U・ツゥバイコフに訊ねた。 「Mr.石川は、スターチャイルドを逃がした。 そのせいで、我々の計画は、大きな変更を強いられたというわけさ」    U・ツゥバイコフが神妙な面持ちでで答えた。  その後、今川は、アイマスクをつけさせられてどこかへ移動させられた。 移動先についた途端、薬をかがされて、目が覚めた時は、カプセルの中に入れられていた。 「ここから出してください! 」    今川は大声でさけんだが、何度、さけんでも返答はなかった。

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