みらいロボットの夢
エピソード6 第3話 嵐の予感

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   今川は、東京に戻り次第、押田の元に行き真相を聞こうと思っていたが、 東京に帰るとすぐ、ロボットの発注が大量に舞い込んだためバーへ行く時間が取れなかった。  発注元は、 「ユニバース&ピースワールドワイドエレクトロニクスジャパン」という新規の会社だった。 レアレースやレアメタルの海外取引を政府から委託されているらしく、 最近、一部上昇企業入りを果たしたという。 「チャンス到来ですね、社長!  この会社は政府公認らしいですから、大手を振って取引が出来ます。 今後も、政府公認の企業が増えるようですよ。 弊社も、政府公認のお墨付きを得られるよう働きかけた方がよろしいのでは? 」    磯屋が前のめりの姿勢で言った。 「その必要はない! 」    今川がきっぱりとことわった。 「総裁選に立候補している生珠議員ですが、 週刊誌に過去の女性スキャンダルをすっぱ抜かれて、 女性からの支持率が低下したらしいですよ」    真浦が皮肉交じりに言った。 「首相にも、闇献金の噂があるじゃないか?  どちらが、総裁選に勝つか、はじまってみなければわからないよ」    磯屋がなぜか、ムキになって言い返した。  シリウスへ行くことが出来たのは、東京に帰ってから、2週間後の夜だった。 「押田、おまえ。何か、私に隠しごとをしていないか? 」    今川が、押田の姿を見つけると詰め寄った。 「いきなり、なんなんだよ? 隠し事? いったい、なんのことだ? 」    押田が驚いた表情で言った。 「じゃあ、聞くけど、血液の違法売買をしているというのは本当なのか? 」    今川がいつになく、強い口調で言い返した。 「もしかして、おまえも受けたあれのことを言っているのか?  あれは、ドロドロ血液をオゾンで洗浄する療法であって血液の売買ではない! 」    押田がぶっきらぼうに言った。 「本当に、やばいことに関わっていないんだな? 」    今川が念を押した。 「あたりまえだろ! 」    押田が鼻をふくらませると言った。 「おまえは、ウソをつくと、鼻がふくらむ」    今川が、押田の顔をのぞき込むと言った。 「そう誤解を受けても仕方がないかもしれねえ。 医療行為と言っても、病院施設ではやらねぇからさ」  押田が決まり悪そうに言った。 「まさかと思ったが、やっていたか! 」    今川はガックリと肩を落とした。 「最近じゃあ、昔なら助からなかった病も、医学の進歩により 治せるようになって、長生きする高齢者が増えたっていうぜ。 高齢者の手術は出血しやすいから、特に、大量の輸血用血液がいる。 ここ数年、血液の病気を患う若者が増えただろう?  そのせいで、献血は禁止になったってわけさ。人工血液だけでは足りないんだよ」    押田が神妙な面持ちで語った。 「だからって、おまえが、危ない橋を渡らなくてもいいじゃないか! 」   今川が訴えた。 「パイオニアになるためには、避けては通れない道ってことだ。 まあ、そのうち、血液の売買は違法ではなくなるはずだ。 やばくなったら、手を引くと約束する。だから、黙ってみていてくんないか? 」    押田が上目遣いで言った。 「やばくなってからではおそい! 今すぐ、手を引くんだ。 そうすれば、なかったことにしてやる」    今川が詰め寄ると言った。 少子高齢化が深刻化したことにより、輸血を受ける高齢者が増す一方で、 献血する若者が年々、減少傾向にある中、血液の違法売買が行われるようになっていた。 血液を売る客の大半が、貧困層の若者だとして、大きな社会問題となっていた。 「時代の流れなんだから、仕方がない。無料で血を提供するなんて流行らないってわけさ」    押田が、あくまでも新商法だと押し切った。 「それで、取引先はどこなんだ? おまえのことだから、委託なんだろう? 」    今川が慎重に訊ねた。 昔から、押田は、他人と違うことを率先して行うタイプだったが、 押田ひとりの力では無理な話だ。後ろ盾となる存在がいるにちがいない。 「それを聞いてどうするつもりだ? 」  押田が嫌そうに言った。 「どうするって、おまえのことが心配なだけだ」  今川が言った。 「外資系のブローカーだと聞いている」  押田が小声で言った。 「外資系のブローカーだって?! やばくないか? 」    今川は思わず声が大きくなった。 「今から、その取引相手が店に来る。そんなに気になるのなら、 自分の目で確かめるといいさ」    押田が決まり悪そうに言った。  閉店真近になって、取引相手だという強面の男、ロシア人のウラジミール・ツゥバイコフが 姿を見せるなり、当然のように、VIP席に座った。 「こちらは? 」    U・ツゥバイコフは、押田の隣に座る今川を目ざとく見つけると低い声で訊ねた。 「友人の今川空雅です。Mr.ツゥバイコフと話がしたいというので同席させました」    押田が緊張した面持ちで、U・ツゥバイコフに今川を紹介した。 「よろしくお願いします」    今川が緊張した面持ちでお辞儀した。 (見るからに、やばそうな男じゃないか? ) 「吾輩に、話したいこととは何だ? 」    U・ツゥバイコフが、葉巻に火をつけると訊ねた。 「あの。あなたがたがやっていることは違法です。 押田には即刻、あなたがたとの契約を破棄させます」    今川が身を乗り出すと言った。 すると、U・ツゥバイコフが、鷹のような鋭い目つきで今川をにらみつけた。 「はあ? てめえ、何様のつもりだ? 契約を破棄させるだと? ふざけるのもいい加減にしろや」    U・ツゥバイコフがけげんな表情で訊ねた。 「違法なんだから、契約を破棄するのは当然の話ではないですか? こちらこそ、聞きたい。いったい、あなたがたはどこの誰なんですか? 」    今川がひるむことなく言い返した。 「これから、この人と話がしたいので、部外者はお引き取り願いますか? 」    U・ツゥバイコフが、押田の方をちらりと見ると言った。 「押田を解放しないのならば、警察に通報しますよ」    今川が言い迫った。 「うるせえ! とっとと、うせやがれ! 」    U・ツゥバイコフがすごんだ。 「もう、やめてくんないか。お代はいらないから帰ってくれ」    押田が、今川に訴えた。 「なんなら、この場で通報しますよ」    今川が、スマートフォンを取り出すと強気な態度を見せた。 「話にならん。失礼する! 」    U・ツゥバイコフが、そう言うと勢い良く席を立った。  

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