みらいロボットの夢
エピソード6 第2話 疑惑浮上!

作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

 トイレから出ると、大内が、トイレの前の壁に寄りかかって待ちかまえていた。 「何かご用ですか? 」    今川は、注意深く周囲をうかがうと小声で訊ねた。 「聞きたいことがあって待たせてもらった」    大内が耳打ちした。 「タクシーを待たせていますので、手短にお願いします」    今川が告げた。 「おたくは、シリウスというバーのオーナーとは知り合いなのかい? 」    大内が低い声で訊ねた。 「はい。古い友人です。何か問題でも? 」    今川は警戒した。 大内の目が一瞬、意地悪く光ったように見えたからだ。 「あのバーは、闇ビジネスの拠点となっているともっぱら噂だ」    大内が告げた。 「噂は噂です。何の根拠もありません」    今川が即座に否定した。 「一見すると、どこにでもあるふつうのバーに見えるが、 店の奥では、血液の違法売買が行われているらしいぞ」    大内が言った。 「血液の売買ではありません。ドロドロ血液を体外に取り出して、 オゾンで洗浄した後戻す血液オゾンバイタル療法というものですよ」    今川が反論した。 「その血液オゾンバイタル療法を受けた客が、 会社の資金繰りに困っているとオーナーに相談したら、 血液を売ることを勧められたそうだ。 実際に、血液を売ったという者からの証言も得ている」  大内が、「今話題のセレブが通う隠れ家的バー、シリウスは、 闇商売のアジトだった?! 」というタイトルがついた記事が載った 新聞を今川の鼻の前につき出した。 「こんなガセネタを信用しろというのですか? 」    今川が訊ねた。 「この新聞社は、完璧な取材をすると有名だ」    大内が答えた。 「たぶん、違うとは思いますけど、本人に確かめてみます」 「取り返しのつかないことになる前に思い留まらせた方がいいぞ」 「教えてくださりありがとうございます」    今川は不本意ながらも頭を下げた。 「おたくが、説得に失敗したとわかった時点で警察に通報する。 じゃあな」    大内は、周囲をうかがうようにして、どこかへ歩いて行った。  急いで、タクシー乗り場へ戻ると、すでに、タクシーが到着していた。 「社長、おそいじゃないですか! もしかして、お腹でもこわして、 個室から出られなかったとかですか? 」    真浦が言った。 「違う。その辺を散歩していた」    今川が耳まで赤くして否定した。 「その辺を散歩していたって、なんなんですか? とにかく、急いでください。新幹線に乗りおくれますよ」    真浦がため息交じりで言った。 途中、核融合炉原子力発電所建設反対派のデモ隊とすれ違った。 「すいません。止まっていただけますか? 」    今川は、そのデモ隊の中に、東元の姿を見つけるとタクシーを止めさせた。 「東元さん! 」    今川はタクシーから降りると、東元のもとに駆け寄った。 「誰かと思えば、今川社長ではないですか。どうして、ここに? 」    東元が決り悪そう言った。 心なしか、顔がやつれて、白髪が増えたように見える。 「核融炉原子力発電所のセレモニーに参加した帰りです。 東元さんこそ、こんな所で、何をしておられるのですか? 」    今川は、東元がとっさに、何かを後ろに隠したのを見逃さなかった。 「反対派の集会があったんです。 我が社の株主には、核融炉原子力発電所の建設反対派が多いんです。 だから、現政権の方針に背くことになったとしても、 反対派を支援しなければなりません」    東元が、プラカードを見せると言った。 「誤解しないで頂きたい。私は中立派です。 仕事上の知人から招待を受けたので、やむを得ず出席しただけです」    今川が必死になって言い訳した。 「政府が、国内のロボットメーカーを統括することになったそうですが、 社長のところは、核融炉原子力発電所関連の仕事を命じられていませんか? 」    東元が小声で訊ねた。 「今のところは、お話を頂いておりません」     今川が答えた。もし、話が来てもことわるつもりだ。 それというのも、会社の経営理念とは異なるからだ。 「それを聞いて安心しました。しばしの辛抱です。 建設反対派の党から、総理大臣が誕生した暁には、 人間ファーストのムーブメントが起こるでしょう」    今川がそう言うと、東元と固い握手を交わした。 それから、近いうちに会うことを約束してその場は別れた。

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません