みらいロボットの夢
エピソード2 第2話 リケジョ

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「速報です。国家宇宙開発プロジェクトチームが、 国内の民間企業に開発を委託していた宇宙資源獲得の実現化に向けて、 宇宙実験を実施することを発表しました」   速報が画面上に流れた瞬間、 男性アナウンサーヒューマノイドが、 差し込まれた原稿を読み上げた。 【レアメタルは、現代のテクノロジー社会には欠かせない 三種の神器といわれておりますが、 海底に豊富に眠っていたはずの国産のレアメタルが、 海底資源のゴールドラッシュや日本近海に頻繁に出没している 海賊による乱獲の影響を受けて、 満足な量が採れなくなって来ています。 日本にはレアメタルの鉱脈がないことから、 このままでは、輸入に99%依存していた時代に 逆戻りすることになります。 すでに、ペルセウス座星団の外側に 大量のレアメタルが存在することがわかっています。 先進諸国が、競い合うようにして 月や火星に向けて続々と探査機や人工衛星を宇宙へ飛ばしたのは、 近い将来、人類が、月や火星に移住する可能性を探る研究に 使用する映像やサンプルを持ち帰るためでした】 【宇宙には、宇宙線と呼ばれる放射線が無数に広がっています。 地磁気の逆転が起きると、宇宙線が地上に降り注ぎ、 電気系統が一斉にショートするだけでなく、 被曝のリスクが高まります】   突然、スタジオ内が暗くなり、 ナレーションつきの宇宙映像が流れ出した。 【宇宙飛行士は、宇宙線から身を守るため 宇宙服をかならず着用しますが、 地球上にいるよりも被曝のリスクが高くなることから、 長時間、宇宙空間で作業を行うことは危険です。 人間の宇宙活動を支援代行する 宇宙ロボットが活用されていますが、 地球から遠隔操作により、作動する仕組みになっていることから、 目標物だけをピンポイントで捕獲し、回収するためには高度な技術が必要になり、 失敗することも少なくありませんでした。 また、放射線に強いCPUは、開発に時間やコストがかかることから、 市販のコンピュータに比べて、1、2世紀おくれており、 保守的な設計になっていることから、 間違いを起こす危険性さえありました。 このことから、長時間、宇宙線にさらされた状態では、 たとえ、ロボットであっても 持続的な正常運転はむずかしいといわれています。 したがって、宇宙で活動するロボットには、 自律的かつ協調的な行動を行う 「自律ロボット」が求められます。 宇宙法により、宇宙空間にある資源を 国家が独占することが禁じられていましたが、 近年、宇宙産業の拡大を求める声が高まったことから、 先進国を中心に宇宙開発やビジネスに関する法整備が進んでいます】 「法整備に併せて、宇宙科学省は、宇宙開発や宇宙ビジネスを手掛ける 優良な民間企業を国の宇宙開発プロジェクトに、 参加させることを表明しました。 現在、国内の大手企業数社が名乗りを挙げていますが、 本日は、その中でも、最有力候補とされている 株式会社ユニバーサルバイオシンクタンク研究チーム主任の 真鍋晃子さんをスタジオにお招きしました」  女性アナウンサーヒューマノイドがゲストを紹介すると、 ボーイッシュなショートカットに、 白衣を風になびかせたキャリアウーマン風の長身の女性が、 スタジオに入ると、大内の隣の席に腰をおろした。 【さっそくですが、真鍋主任率いる研究チームが現在、 取り組まれている研究内容をお聞かせください】    女性アナウンサーヒューマノイドが、 真鍋の方に向き直ると告げた。 「弊社研究チームは、 バイオミメティクス技術を応用した製品の開発に取り組んでおります。 バイオミメティクス技術について簡単に説明しますと、 昆虫や草花などの特徴的な性質や 構造を活かした機能を製品に取り入れた技術のことです」    真鍋が答えた。 「その昔、国内企業が開発した ヤモリの足の粘着力を模した最先端テープの 分析用粘着テープが話題になりましたが、 バイオミメティクス技術を応用した製品というのは、 分析用粘着テープと同じようなものでしょうか? 」    男性アナウンサーヒューマノイドが、真鍋に訊ねた。 「おっしゃる通りです。弊社研究チームはまた、 地球上に存在する微生物の生態についての 研究にも取り組んでおります」    真鍋が答えた。 「古来より、さまざまな微生物が 我々の身近な場所に生息していますが、 真鍋主任率いる研究チームでは、 どのような種類の微生物を研究されているのですか? 」  女性アナウンサーヒューマノイドが、 地球上に存在すると言われる 微生物の種類と分布図のパネルを出して質問した。 「そうですね。微生物の中には、 酸素の乏しい湖や沼の底を好んで生息している 「磁性細菌」と呼ばれる微生物がいます。 磁性細菌は、体内に鉄イオンを取り込む性質があることから、 磁石と同じ作用があります。 これまで、その特性は、環境中の有害汚染物質を除去する 環境浄化システム、バイオレメデイエーション) レアメタルをはじめとする貴金属の イオンが溶けている工業廃水の中から レアメタルだけを回収する、メタルバイオテクノロジー ガンの治療、遺伝子治療への応用、 ドラックデリバリーシステムで活用されています」   真鍋が流ちょうに説明した。  今川は、手元に用意された原稿に目もくれず、 カメラ目線で説明する姿に感心した。 「つまり、磁性細菌の性質や構造にも着目なさっているというわけですね」    男性アナウンサーヒューマノイドが言った。 「さようです」    真鍋が返事した。 「本日は、お忙しい中、 スタジオにお越しいただきありがとうございました」    女性アナウンサーヒューマノイドが、真鍋に退席をうながした。 「宇宙開発と言えば、忘れてはならないのが、 宇宙開発に関心を持ち取材を行う同人クリエィター集団です。 大内氏は、宇宙作家クラブの中心メンバーとして、 世界各地を取材してまわっています」  女性アナウンサーヒューマノイドが強引に話題を変えた。  軽快な音楽と共に、大内の顔が、アップで映し出された。 「そう遠くない未来、人類は、 バビタブルゾーンにある生命が存在するといわれる K452bという星に到達するでしょう。 くわしい話は、全国の書店にて 絶賛発売中のこの本をお読みください」  大内が新刊を紹介した。  新刊の帯には、UFOの特集番組でおなじみの オカルト雑誌編集長の顔が出ていた。 今川は、自分には縁のない本だと思った。 「内容を少しだけ紹介していただけますか? 」    女性アナウンサーヒューマノイドが、大内に訊ねた。 「一昨年の本屋大賞にノミネートされた月の船の続編です。 前回は、月にある地下空洞に似た地下洞が、 地球上にも存在するという説を紹介しましたが、 今回は、宇宙ビジネスに関する新情報と共に 地球人が、宇宙へ移住する可能性の検証を行いました」    大内が答えた。 「ただいま、ご紹介しました大内望月著書、 天の船~選ばれし者たちを抽選で5名の方にプレゼントいたします。 ハガキまたはHPからご応募ください。 消印は、来週の火曜日まで有効とさせていただきます。 それでは次の話題に移りましょう。」  女性アナウンサーヒューマノイドが話し終えるや否や、 突然、映像が消えた。 「大内弁護士が、このタイミングで、 社長に声をかけたのは、単なる偶然ですかね? 」   磯屋が言った。 「偶然に決まっているさ。そんなことより、 製薬会社が、弊社にアプローチしてくるとは、 弊社にとって、転機になるかもしれない」    今川が言った。  ちょうど、事業展開を考えていたところだ。 異分野の企業が、興味を示して来たということは、 ゼウスニアは、 単なるロボットメーカーに留まらず 需要がまだ他にあるということになる。 「社長。これって、美魔女から、 社長へのアピールじゃないですか? 」    磯屋が言った。 「おまえは、そもそも、着眼点が間違っている。 彼女は、自分たちが研究している内容をわかりやすく説明するために、 自らが出演したTV番組の収録テープを送って来たんだ。 人間として興味を示したわけではなく、 あくまでもビジネスのためだ」    今川が咳払いすると言った。 「冗談ですよ。どうぞ、聞き流してください」    磯屋が苦笑いして言った。 「とりあえず、先方には観たと返事しておけ。 国の事業に携わっているようだし、 何かの役に立つかもしれない」    今川が告げた。

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