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 それには、潔子の目標が並んでおり達成したものにはペケ印がついている。潔子と玲が恋人として行っていくスキンシップが段階ごとに書いてあって、三日に一回どこまでできるかをふたりの時に試している。勿論、潔子は両方の手袋を外し、素手であることが絶対だ。  目標を立てながら、その行為全てを想像すると潔子の顔は自然と歪む。恋人とはいえ、他人との接触に対して抵抗の方が先立つ。が、これも認知療法のひとつだと言い聞かせどうにか取り組むことに決めた。  最初に達成したのは素手で小指繋ぎ。これをやった後に手を洗わないという目標を立てて、とりあえずクリアできた。それから『手を繋ぐ』も、やや苦労したもののペケ印がついた。  それから『肩を組む』『抱きしめられる』まではどうにか達成して、次の目標は『抱きあう』だ。玲から抱きしめられて、玲のことも触れることができるかを試す。意外にも潔子にとってはハードルが高い目標だった。この目標で二週間ほど止まっている。  今夜も玲はおそるおそる潔子を包む。海風みたいな匂いがして、身体が強ばるが嫌がるほどでもない。潔子はゆっくりと腕を動かして玲の腰の辺りを掴む。 「ん ……無理そうか?」 「いえ……」  玲の手が潔子の背骨を撫でる。病気のそれとはまた違う感覚が身体を駆け巡り、思わず声を出してしまう。玲が身体を離し、不安げに潔子を覗きこむ。 「……どうした? 離れた方がいいか?」 「あ、い、いえ……大丈夫です」  玲の腰辺りから背中へ手を伸ばしてぐっと力を入れる。人に触れている現実と、恋人の温もりが同時に潔子の身体に流れ込んで頭が熱くなった。先ほどまで添えられていた玲の手に力が込められるのを感じると、更に愛おしくなる。 「お、できたな」 「はい。でももう離してもらっていいですか? これ、結構恥ずかしいです」 「恥ずかしいって理由なら離さねえ。お……本当に耳真っ赤だ」 「見ないでください、離してください」  玲は潔子の願いを聞き入れてはくれない。なにを言っても「やなこった」としか返さない。それに伴って腕の力が強くなっていくので、もう抵抗は無駄だと諦めに入る。    潔子は手を伸ばして目標リストを手に取り、玲の肩越しに次の目標を確認する。玲も身体を離してリストの項目を見た。恋人っぽい項目がずらずらと並んでいる。 「次は……『玲のベッドで添い寝』ですか……ハードルが急激に上がりますね」 「なるほどな。他人のベッドで寝れたら、他人のものに長い時間触れるって点をクリアできるのか……ちょっとやってみるか?」  玲はベッドに転び、潔子の手を引く。おそるおそる玲のベッドに膝をつき、そのまま寝転ぶ。布団やシーツからは当然だが自分がいつも使っているものとは違う匂いがして落ち着かない。起き上がりたくなるが、玲に真っ直ぐ見られていることに気づくと、それが少しだけ和らいだ。

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