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 玲の瞳は深い海の色を閉じ込めた宝石のようだ。綺麗だと思ったことはこれまでに何度かあったが、こうやって近くでまじまじと見るのは初めてだ。吸い込まれそうな瞳とはこういうことを言うんだろうと潔子は思っていた。 「……玲さんの目って綺麗ですよね」 「お前……抱きあうのは恥ずかしいのに、そういうこと言うのは平気なのか」 「綺麗なものは綺麗って言いますよ。え……もしかして玲さん照れてる?」 「はあ? 別に照れてねえし。お前、調子乗んなよ」  玲が身体を起こして潔子に覆いかぶさる。見下ろされるのは別の意味で心臓に悪かった。恋人同士なら、なんてことないはずだ。だけどこの状態はどうしてもスキンシップの終着点を連想させる。そこまでは、まだだ。潔子が目を逸らすと玲ははっとして潔子の上から退けた。  元いた位置に寝転ぶと潔子に向かって腕を伸ばす。 「わりい……とりあえず添い寝」 「いえ……。これも結構照れますね」  抱きあうより距離は離れているが、近距離でじっと見つめられるのは照れくさい。その熱がこもった視線を普通のカップルのように素直に受け入れられたら、幸せなんだろうと潔子は思った。 「このまま寝てみるか。帰りたくなったら勝手に帰っていい」 「眠れるかな……」 「気になって眠れねえなら、自分の部屋に戻っていいぞ」 「いえ……そうじゃなくて、玲さんに腕枕されてんの照れます。それで眠れる気がしない」  玲は目を大きく見開いたまま黙りこみ、腕はそのままに顔だけを潔子から逸らした。今度は玲の耳が熱い温泉に入ったかのように真っ赤だった。 「……そういう可愛いこと言われるとですね……目標をいくつかすっ飛ばしそうになるんすよ、潔子さん……」 「え? なんかすいません」 「なので、可愛い禁止……」 「可愛くしてるつもりはないんですけど、わかりました」  そんな夜を過ごし、ふたりは翌朝までぐっすりと眠った。目覚めてからすぐにふたりでリストを覗きながら『玲のベッドで添い寝』にペケ印をつけた。一気にふたつも達成した、と玲は朝からご機嫌の様子だった。

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