しーなねこ十篇
イタコ刑事

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 あるパーティーの最中、殺人事件が起きた。  被害者は三〇代のOL。後頭部に鈍器で殴られた跡があった。パーティー会場は、山奥にある洋館。参加者は被害者を含め七人。  通報を受けた地元の警察が駆けつけ、すぐに捜査を始めた。館の周囲には防犯カメラが設置されており、事件の前後で出入りした者が映っていなかったので、犯人はパーティーの参加者の中にいると警察は断定した。  パーティーの参加者は、館の主人である男とその妻。主人の取引先のベンチャー企業の社長と、そのパートナー。主人が行きつけにしているスナックの飲み仲間である殺人鬼と、殺されたOL、そして、いかにも殺人事件を起こしそうなおじさんだった。  警察はまず、いかにも殺人事件を起こしそうなおじさんが犯人ではないかと睨んだ。しかし、証拠は発見されなかった。事件から一晩が明けたが、警察は参加者の誰かが犯人であることは間違いないと考えていたので、ひとりも家に帰さなかった。警察はある人物を現場に急行させていた。彼の名は恐山。またの名をイタコ刑事といった。 「お疲れさまです」  恐山が立ち入り禁止の黄色いテープをくぐって館に入ると、現場の警察官たちは一様に安堵の表情を浮かべた。暗礁に乗り上げかけていた密室殺人事件が、これで解決すると思ったのだろう。警察官のひとりが、さっそく被害者の画像を恐山に見せると、恐山はじっと画像を見つめてから、すべてを了解したかのようにゆっくりと頷き、関係者全員リビングルームに集めるよう指示した。 「結論から言いますと、犯人はこの中にいます」  恐山が言うと、リビングルームに集められたパーティー参加者全員が、そう言うと思ったという顔をして、静まり返った。 「犯人は――」  恐山はそう切り出すと、骨抜きになったように床にへたり込んだ。 「いまから亡くなった被害者の霊に来ていただき、恐山刑事の口を通して、犯人を語っていただきます」  警察官が解説をする。ぐったりした状態でしばらく唸っていた恐山が、ぽつりぽつりと語り始めた。「……ノヤロ、コノヤロ、コノヤロー!」  と金切声で叫ぶと恐山は、いかにも殺人事件を起こしそうなおじさんに飛びかかった。その表情は、さっきまでの恐山ではなく被害者のOLのものだった。警察官が恐山を両側から抑える。すごい力で弾き飛ばされそうになりながら尋ねる。 「あなたを殺したのは、このおじさんですか?」 「わかんないわよ! でもこいつでしょ! いかにも殺人事件を起こしそうでしょ! 後ろからやられたから犯人は見てないわよ! でもこいつに決まってる!」  怒り狂い、絶叫している。いかにも殺人事件を起こしそうなおじさんは、口許に微笑を浮かべたままじっとしている。殺人鬼は自分がのけ者にされている感じがして、いらいらしていた。

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