さよならリベリオン
1−6 藤波蒼良の場合

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 蒼良はライブの話をすることをやめた。  蒼良になにもしてやれない祖父母が悲しむことがわかっていたし、ふたりにはそんな顔をさせたくなかった。  自分さえわがままを言わなければ済む。  そう思っていたところに、はとこの友香ともかがやってきた。友香は美智恵の妹の孫で、大学二年生だ。  きのこみたいな形のショートカットで、流行りのアイドルグループの推しと同じ髪型だと話していた。 「美智恵おばちゃんから聞いたよ。ライブ行きたいんでしょ。チケット取るし、付き添いも引き受けるよ」 「え、いいの?」 「蒼良くんの記念すべきライブデビューだし。ライブって楽しいんだよ。私もアイドルのライブによく行くけど、ほんと元気もらえるし。で、どんなアーティストのライブに?」  蒼良はリベリオンのデビューシングルのMVを見せた。友香はぽかんとした後、小さく「……オッケー」とつぶやいた。  こうして、蒼良はリベリオンのデビューライブに行くことになった。  会場は吉祥寺のライブハウスだ。キャパシティは五〇〇人。  薄暗い会場の中に人がぎゅうぎゅうに押しこめられていて、小柄な蒼良は周りの大人に押されてふらつく。友香に「しっかり」と言われ右腕をつかまれていた。  よくわからないガールズパンクバンドのライブに、会場に到着する直前まで友香はあまり気乗りしていない様子だったが、会場の中に入るとその気になるらしい。友香は興奮した様子で蒼良に声をかけてくる。  自分の周りには友香を除いて、リベリオンのファンしかいないのだ。そんな状況に、蒼良の心臓は高鳴る。  リベリオンが派手な身なりをしているせいか、ファンも独特な服に身を包んでいる割合が高い。蒼良のすぐ隣にいた男女は、メンバーの衣装と同じようなものを着て、メイクも似せていた。  リベリオンの衣装って売ってるんだなあ、と考えていたら会場内の照明が落とされ、あたりが真っ暗になる。  ざわめく観客の声が遠く聞こえて、自身の心臓の音だけが蒼良の鼓膜を叩き、額にじわりと汗がにじんだ。  真っ赤な照明がステージを照らすと、リベリオンの四人が立っていた。  ──ようこそ!  ボーカルのアリサの声が響きわたると、爪先から頭の先まで電流が走る。身体の中で行き場をなくした熱が、瞳からにじむ。  そして、目の前のリオは折れてしまいそうなほど細くて、小柄だというのに重そうなベースを抱えて演奏している。その力強い生き様に、蒼良は激しく惹かれた。  自分の幸せはここにある。蒼良はそう確信した。

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