re 前世
9 たとえ嫌われても聞いて欲しくて

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 自分の部屋に入って来る希実。  通知音が鳴り、携帯でラインを開くと画面に沙耶良から友達申請が届いている。 「あ、沙耶良さんだ」  許可する希実、机の前の椅子に座る。  画面に『お久しぶりです。元気ですか?入院中は大変お世話になりありがとうございました。今妹のアパートにお世話になっています。明後日妹に付き添って貰い、二週間後検診に伺う予定です。希実さんはご出勤の日ですか?』とメッセージが送られてくる。 「ああ、良かった。沙耶良さん一人じゃないんだ‥」  返事を書いている希実。『お久しぶりです。お元気そうで良かったです。明後日いらっしゃるんですね。お昼までいるので、検診立ち会えると思います。沙耶良さんと赤ちゃんに会えるの楽しみにしています。赤ちゃんのお名前決まったんですか?』  既読になり、返事が来る。『会えるんですね。嬉しいです。名前はきぬです。良かったらお仕事が終わった後、家へいらっしゃいませんか?あ、妹の家ですが‥。色々お話したいです。』 「きぬちゃんか‥可愛いな‥あ‥」  希実、沙耶良がきぬとうわ言をいっていたことを思い出す。 「‥沙耶良さん、すごいな‥」  希実、『是非お伺いしたいです』と返信すると『楽しみにしています』と返ってくる。  携帯を机に置く希実。 「沙耶良さん‥やっぱり私の場合は違うみたいです‥色々とアドバイスしてもらったのに‥ごめんなさい‥」  ため息をつく希実。  沙美莉のアパートで希実のお土産のケーキを食べながら談笑している希実、沙耶良、沙美莉。 「すごい、沙美莉さんバイタリティありますね」 「いえ、じっとしてられないだけです」 「でも一人で海外に行く勇気無いな‥」 「私も絶対無理‥」 「行けば何とかなるものですよ。言葉覚えるのもそうだけど、スキル磨くのにも一番の近道なんで‥」 「なるほど‥確かに近道でいければ同じ時間でも色んな所に行けるってことですもんね。そういう人って沙美莉さんみたいに年下だったりしても経験値が高いっていうか、やっぱりどこか違う感じがするな‥偉いなぁ」 「いや、本当にこうしか出来ないだけで、別に偉くないです」  近くでクッションに寝ていたきぬが目を覚まし、泣き始める。 「あ‥お腹空いたのかな‥」 「私ミルクあげてくるよ。お姉ちゃん、希実さんとゆっくりしてて。たまには息抜きしないとだよ」 「うん、ありがとう」  手早くミルクを作り、きぬを抱っこする沙美莉。 「希実さん、ゆっくりしてって下さいね」 「ありがとうございます」  部屋を出て行く沙美莉。 「しっかりした妹さんですね」 「すっごく助かってます」 「女姉妹っていいですね。羨ましいな‥」 「そうですね、大人になって余計にそう思います‥希実さんはご兄弟はいらっしゃるんですか?」 「兄がいます‥」 「ご結婚されてるんですか?」 「いえ‥もうすぐするみたいで」 「わあ、おめでとうございます」 「はい‥」  複雑そうな希実に、少し不思議に思う沙耶良。 「あの‥希実さんに聞いてもらいたいなって思って‥」 「‥はい」 「実は‥こないだの日曜日にきぬの父親の奥さんが来られたんです」 「え?‥」 「ご存じだと思うんですけど、私体外受精して‥その為にアメリカへ行ったんです」 「はい‥体外受精っていうのは知ってます。若いのに何でだろうって思ったけど、もしかしてあの夢のことが関係あるのかなって思ってて‥アメリカの方なんですか?」 「はい、アメリカに行って実際に面会したことがあって、その時その方の奥さんにもお会いして、理解してくださって‥」 「へえ‥すごいですね‥」 「でも、ご主人が事故で突然亡くなられたらしくて‥」 「え‥」 「それで奥さんがご主人の血をひくきぬを引き取りたいって日本へいらっしゃったんです‥」 「そんな‥」 「でも、話して理解して頂いて、今は連絡を取りながらきぬの成長を一緒に見守って貰ってます」 「そうだったんですか‥大変だったんですね‥」 「はい、最初に弁護士さんから連絡があった時はちょっと怖かったです。またきぬと離れ離れになってしまうのかな‥もしかしてまた夢と同じ運命になってしまうんじゃないだろうかって思って‥」 「‥」 「でも奥さんも少し落ち着かれて‥今思うと一年位前から急にご主人が臓器提供の登録したり、骨髄バンクに加入したりし始められたらしくて、もしかしたら自分でも気づかないうちに何か予感めいたものがあったのかもしれないって仰っていて‥」 「‥そうなんですか」 「はい‥すみません、何か希実さんには話したいって思ってしまって‥」 「‥」 「こないだ私、お節介なこと言ったのかなって思ったんですけど、だけどやっぱり何かあの夢のこと伝えなきゃいけなかった気がしていて‥それが私の役目みたいな気がして‥分からないけど‥」 「‥私‥沙耶良さんが意味があるって言ってくれるのは本当に有難くて嬉しくて‥私も沙耶良さんに私の中にある映像のこと話したいのに‥やっぱりどうしても言えなくて‥多分引かれると思う‥そんなとんでもないことなんです‥」 「全然言う必要なんてないですよ。分からないけど‥そうなら苦しいですね‥」 「‥」  どうしよう‥沙耶良さんは私を信用して全部話してくれたのに‥。なのに私のことを気遣ってくれていて‥。沙耶良さんは本当のことを聞いても、きっと引いたりしない‥。私も話そう。どう思われても本当のことなんだから仕方がない‥。 「あの‥私の中にある映像って、一緒にいる男の子をすごく好きだって思ってるんです」 「あ‥言わなくて大丈夫ですよ」 「いえ‥もし話して沙耶良さんに嫌われても、本当のことなので仕方ないです。それでも沙耶良さんに聞いて欲しいです」 「‥はい」  少し身構える沙耶良。 「‥その映像の中の好きな男の子って恐らく今の兄なんです」 「え‥」 「自分でもこれって気持ち悪いことなんだろうって思います。こんなこと誰にも知られてはいけないって思って‥」 「‥」 「‥もし自分の中にこの映像がなく生まれてたら、普通に兄妹でいれたのにって何度も思って‥でもその映像の中で大好きだった想いがどうしても心を占めていて、どうしようもなくて‥」  深刻な事実に、どう声を掛けていいのか分からない沙耶良。 「‥そうですか‥すみません‥やっぱり私、余計なこと言ったんですかね‥すみません‥」 「いえ‥沙耶良さんには本当に感謝しています。すみません、こんなこと聞いても何も言えませんよね‥」 「‥生まれた時からずっとって‥長いですね‥」 「‥」 「あの‥私‥自分が見てたあの夢は、やっぱり自分が経験したことだと思います。非科学的だけど、あの景色のリアルさやきぬを思う気持ちの切実さは絶対に存在します‥だから希実さんが記憶の映像が心を支配してどうにも出来ないということは、私にも理解出来る気がします」 「‥はい」 「でもあれは‥神様が大切なことを教えてくれたんだと私は思うんです」 「‥偉いです。沙耶良さんは‥ちゃんと前に進んでいってる」 「全然そんなことないですよ。全然思いもしないことが起こったり‥これからだって不安ばかりですし‥もっともっと考えなきゃいけなかったって反省してますし‥あ、でもきぬを生んだことは間違ってなかったって思ってるけど」 「うん、もうそれは絶対そうです」 「はい‥」 「‥私もいつかこの心境が少しでも、何か変わったりすることがあるのかな‥」  何も言えなくなる沙耶良。

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