re 前世
17 記憶が交差する時

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 それから一年後、睦のいる長崎へと旅行に出かける希実と未知音と和志。  空港で出迎える睦、そのまま四人でその日に泊まる雲仙へと向かう。  一年間睦は考えて、希実に自分が見た夢のことを話してあげた方がいいんじゃないかと思った。  希実が結婚しないと言い続けているのは、もしかしたら希実の中に小さい頃からある映像のせいなのかもしれないと思い始めていた。  睦が『雲仙噴火歴史館』へ案内する。  普通に資料を見て行く未知音と和志と希実。  希実、江戸時代の雲仙噴火の資料を見て立ち止まる。 「‥」  驚いたようにじっと資料を食い入るように見ている希実。  そんな希実の姿に、睦はやっぱり希実もこの噴火に思い当たる節があるんだと思った。  希実は自分の中にあった映像の記憶と一致する資料の内容に驚いていた。  とっくに未知音と和志が先の方へ行ってしまったのにも気づかず、資料に眺めいっていた。  睦、その後有明海沿いを運転し、佐賀方面へ行く道へと案内する。  有明海と雲仙が望める高台の休憩所へ車を停める睦。 「わー‥綺麗な景色だね‥雲仙も見える」  車を降りる未知音と和志。  希実、外の景色をじっと見つめる。島原が望めるその場所は希実の映像の記憶の中の景色と地形がよく似ていた。 「降りようか‥」  希実に声を掛ける睦。 「あ‥うん‥」  車を降り、吸い寄せられるようにガードレールのある端まで歩いて行く希実。 ふと希実に記憶の中の映像が蘇ってくる。 「あ‥」  仁と一緒に見た、家族になることを誓った時のあの景色だった。  呆然と目の前の景色を見ている希実。睦、希実の隣に立つ。 「ずっと希実の中にあった映像って‥ここのこと?」 「‥え?」  驚いて睦を見る希実。 「‥希実、子供の頃に言ってたよね‥睦と家族になるって約束したんだって」 「‥覚えてたの?」 「一年前に思い出したんだ‥」 「‥一年前?」 「うん。俺も夢で見たんだよ‥」 「‥え?」 「‥去年、母さんと長崎に来た時‥夢に見たんだ。何か自分が昔、島原で暮らしていて仁って呼ばれてて、希実に似てるかおっていう女の子に会って‥でも、希実に言えなくて、確認するのが怖かった‥」 「‥そうだよね‥ずっと妹だったのに‥ごめんね‥気持ち悪いよね」 「違うよ、そんなこと全然思ってない。それは違うから」 「‥」 「ずっと何も知らなくて、悪かったなと思ってる‥」 「ううん‥当然だよ、こんなこと想像できるわけないし‥」  突然のことに戸惑う希実。 「そうだけど‥でも希実にはずっとこれが現実だったんでしょ‥」 「うん‥そうだね‥この映像に何かの確信があったりした訳じゃないけど、どうしてもそこから離れることが出来なくて‥」 「‥」 「でも、これはただ私自身の問題で、睦には何の責任もないし‥」  何とか気持ちを伝えようと言葉を探す希実。 「何て言うか‥私、多分何度やり直しても同じ人生を送るって思うし、これ以外無理で出来ないなって思うから、ただ仕方ないことなの。睦のせいじゃないから」  睦に自分が悪いと思って欲しくない希実。  睦は希実に今の自分の思いを伝えることが、希実の為に自分がするべきことなんだろうと思っていた。 「ごめん‥あの夢は俺の中にあるけど、でもずっと今まで希実とは兄妹として過ごして来て、そっちの方がどうしても重くて」 「そうだよね‥睦には最初っから私はずっと妹として存在してたんだもんね‥」  睦の思いを受け止める希実。分かっていたけど、言葉として聞くとやはりショックだった。 「‥だけど、ずっと近くにあったものが無くて、何だかこの一年自分じゃないみたいで‥何かが足りないみたいで‥希実の不在は結構俺にとってダメージが大きくて‥でもそれはやっぱり家族としてで‥」 「分かるよ。睦が私を妹としてしかみてないってことは身に染みて分かってる」 「‥」 「二十歳を過ぎてからも睦の態度は全然変わってなかったし、今も睦は妹の私に話してるって思うし‥」 「‥うん」  希実の中に睦への思いがグッと溢れてくる。 「でも、私は最初から睦は記憶の中の仁に重なってたし、だからどうしても兄のようには思えなかったよ、ずっと。‥この映像が無かったら良かったのにってどれだけ思ったか‥」 「‥」 「でも‥このまま伝わらないままなんだろうって思ってたから、何か伝わっただけでも報われたと思う‥」 「ごめん‥」 「謝らんで‥」 「うん‥」 「気にしないで‥」 「うん‥」 「ありがとうね‥言わないことだって出来たのに、言ってくれて本当に有難いって思ってる」 「‥」  遠くから和志の叫び声がする。 「睦ー、希実ー!家族写真撮ろうよ!」  見るとカメラを持った和志と未知音が、手を振っている。 「うーん!今行くー!」  叫び返す希実、走り出す。少し離れて後を追う睦。  和志と未知音の元へ駆け寄る。  絵が描かれたボードから顔だけを出すタイプの家族写真。  和志がセルフタイマーをセットして写真を撮る。笑顔で写真に納まる四人。  希実は動揺していた。  私の恐らく生まれた時から刻まれていた記憶が、何の為だったのか分からない‥沙耶良さんの言うようにこの映像は前世の物なのかもしれない。この資料館で事実であったことが証明されたようでもあるし、睦も同じ夢を見たということでも証明されたように思う。でも沙耶良さんのように前世からの想いを叶える人もいれば、私のように叶わない人もいるのかもしれない‥  次に家族で有明海と雲仙を背景に写真を撮っている。  でも私は沙耶良さん程努力したんだろうか‥妹としてしか見れないと言われて仕方のないことだと思って‥妹じゃなく見て欲しいって言ったらどうなるんだろう‥ひかれるのかな‥でもこのまま言わなかったらそれはそれで後悔するのかな‥否定されるのは怖いけど、睦はそんな人じゃない。だけど、睦には瑠衣さんがいる‥  ホテルに着き、部屋でお酒を飲んでいる睦と和志。 「睦がいるといいな。睦がいないと十人くらいいない気がするって皆で話してたんだよ」 「あはは。俺もこの歳で初めて一人暮らしして、時々すごく家が恋しくなる」 「本当?」  嬉しそうに続けて話す和志。 「でも二十歳の時‥あの話をした後に、睦に一人暮らししたいって言われたんだよね。あの時は必死に抵抗して思いとどまって貰ったけど‥」 「ああ、そうだった‥確かにあの時に家を出てたら良くなかったかもな‥」 「でもあれから何となく睦は変わった気がして‥具体的にどうって説明は出来ないけど、何か甘えなくなったっていうか‥それまでも睦はしっかり者だったから特に変わった行動があった訳じゃないけど、何となくそれまでとは違ったんだよな」 「そうなのかな‥」  二十歳の頃を思い出す睦。  今から6年前、睦は教授に大学院進学を勧められたが、就職しようとしていた。未知音からそのことを聞いた和志は初めて睦に声を荒げた。 「何で大学院いかないんだよ。俺達が本当の親じゃないから?」 「いや、自分の将来を考えてそうしたいと思ったからだよ」  睦を睨む和志。 「睦には大学院に行って貰う」 「何で?俺の人生なんだから俺が決めるよ。何で父さんに決められなきゃいけないんだよ」 「睦は自分で決めてないよ。うまく説明できないけど、大学院に行かないって決めた睦はあの話を聞いてからの睦で‥嫌なんだよ。何か‥本当の両親を求めてしまう気持ちはどうしたってあると思うけど、ここに持ち込まれるのは嫌なんだ。ここだけは遠慮なんかしないで欲しいし、ここに向けて睦を預かってきたようにも思うし、育ててきたっていうのは何かおこがましいようだけど‥」  大学院受験票に記入し始める和志。 「とにかく、睦には大学院を受験してもらうから」 「‥」  黙ってしまう睦。口を開く未知音。 「和君‥それ本人が書かないと無効になるんじゃない‥」 「え?!‥どうしよう‥ヤバい、どうしたらいい?」 「‥大園先生にもう一枚貰ってくるよ」 「ごめん‥」  笑っている未知音。つられて笑う睦。 「ね‥睦、私も受験して欲しい」 「‥」 「もし、私達が本当のことを話す前だったら大学院へ行ってたんじゃない?だとしたら‥私達、話したことを後悔することになるよ‥」  二人の思いに直面して、思い直す睦。 「うん‥じゃあ、そうする。‥ありがとうございます」  受験を決める睦、二人に頭を下げる。  ホッとする和志と未知音。ふと疑問がわく。 「睦‥受かる?」  未知音が睦に訪ねる。 「‥勉強しないと、今からじゃ厳しいかも」 「え?勉強して」 「うん」  慌てて二階へと上がっていく睦に笑う和志と未知音。  睦、ホテルの冷蔵庫から缶ビールを取って和志に渡す。 「はい」 「ありがとう」  受け取る和志。  「これから先さ‥睦が俺達に遠慮してるって思ったら、逆に進んで欲しいんだ。それが俺達にとって嬉しいことだから」 「え?ああ‥うん」  何となく頷く睦。  おつまみを買って部屋へ戻っている未知音と希実。 「何かさ‥最近瑠衣ちゃんが何となく違うんだよね‥」 「‥」 「今まではさ、未知音先生って呼んでくれてたんだけど、最近は成田先生って言われてて‥何となく遠慮されてる感じがして‥」 「‥そうなの?」  エレベーターに乗る未知と希実。 「うん‥こないだ他の先生と一緒に話してる時も、付き合ってる人いないって言ってたんだよね‥もしかしたら私がいたから照れてたとかなのかなって思ったりもしたんだけどさ、でもきっと瑠衣ちゃんだったら、いますって言う気がするんだよね‥」 「‥うん」 「何となくやっぱりそうなのかなっていう感じがして‥まあ、私達がどうこう言えることじゃないけど‥何か寂しいね‥」  部屋のドアを開ける未知音。  暫くして未知音と和志が散歩へ行こうと言い出し、四人で外へ出て行く。  あちこちから湯けむりが噴き出しており、所々にライトアップの光が照らし出されている。  未知音と和志が先へ歩いて行ってしまい、何となく気まずい睦と希実。二人の後を追う形で歩いて行く。  「去年も母さんとここに泊まったんだ。長崎の父さんに会いに来た時‥」 「そっか‥あれから一年経ったんだね‥」 「うん‥」 「あのさ‥私が言う映像のことなんだけど‥睦が見た夢と同じかどうかは分からないけど‥」 「うん‥」 「‥私には多分生まれた時から、ずっと昔の記憶みたいなのがあって‥その中で仁っていう男の子といつか一緒に家族を作ろうって約束して‥その記憶の中の仁が今の睦だっていうのが何故か私には分かって‥」 「‥やっぱり、あの時仁って言ってたんだ‥」  独り言のように呟く睦。 「その中で私はかおって呼ばれてて‥災害で家族を亡くして悲しくて、でも偶然同じ境遇の仁に会えて、やっと一人じゃないって希望が持てて生きていく目標が出来たんだけど、でもあの‥奉公先へ戻らなきゃいけなくて‥」 「‥」 「奉公とか変だよね‥自分でも何言ってるんだろって思うけど‥」 「ううん‥俺の夢と同じだ‥」 「本当?」 「うん‥」 「それで‥その後、奉公先の庄屋さんだった人が亡くなって‥だけど、私にはまだ奉公期間が残ってて、結局京都にある菜種製油所へ行くことになったの‥そこにさちさんっていうお姉ちゃんがいて‥」 <前世>江戸時代後期  京都の石垣菜種製油所で働いているかお。  かおがこの製油所へ来て暫くした頃、この製油所に娘のさちという人がいることを知る。さちは仕事中のかおの様子をよく見に来ていた。 「かおちゃんいうんはあんたさん?」 「はい‥」 さちはかおの仕事が終わるのを待って、自分の部屋で話をしようとかおに声をかけてくれた  さちの部屋には千代紙で作られた折り鶴など、かおが初めて見る京都の物が置かれていた。 「綺麗かですね‥」 「‥その鶴、うちが折ったんえ」 「え‥そげんとですか‥すごか‥」 「きぬの無事を祈って折ったんえ‥」 「‥きぬ?」 「うちの妹おす。今はどこにおりやすのかも分からんのおすけど‥」 「そげんとですか‥」 「かおちゃんは兄弟がおりやすの?」 「はい‥弟と妹がおって‥」 「不知火に?」 「うんにゃです。元々ウチがおったとは島原っていうところやとけど、山崩れにあったとです‥」 「あ‥向こうの方で何や大きな災害があったんどしたな‥せやったんおすか‥寂しおすな‥」 「はい‥でん、今は新しか家族ば作りたかって思っとるとです」 「‥そうどすのんか?」 「はい。奉公が終わったらそこさん戻って、仁ちゃんと新しか家族ば作ろうって決めとるとです」 「仁ちゃん?」 「はい。仁ちゃんもお父さんもお母さんもおらっさんくて、うちは仁ちゃんの伯父さんの家でちょっとの間だけやけど一緒に暮らせて‥」  大切そうに話すかお。 「へえ‥」 「仁ちゃんが一緒に家族ば作ろうって言ってくれなはって、だけんあの家に帰るとが待ち遠しいとです」 「よろしおすね‥うち応援しおすよって、それまできばりおす」 「はい。ありがとうございます」  さちとかおはそれからも毎日のように二人で色んなことを話して過ごした。  そんな冬、京都の寒さはかおにはこたえた。最初は些細な風邪のようだったがなかなか治らず、そのまま仕事にあたったからか、咳が段々と酷くなってきていた。心配したさちがお医者を頼み、薬も処方してもらったが一向に快復せず、起き上がるのも困難になっていった。   布団に寝ているかお。さちがお粥を持って来る。 「かおちゃん、少し食べて‥」  上半身を起こすかお。 「元気になってな‥仁さんとこに帰りおすな」  頷くかお。  かおが心配で仕方ないさち。  皆が仕事へ出払い、一人で部屋で寝ているかお。 「もううちはあの家に戻れないんとかもしれん‥仁ちゃんにももう会えんとかもしれん‥」  急に居ても立ってもいられなくなるかお。 「何とか仁ちゃんたちの所に一目だけでも戻りたい‥」  ただそれだけ思って、立ち上がりそこを出て行く。  雪の舞う中、西の峠へ向かって歩いて行くかお。次第に咳が酷くなっていく。それでも前へ進むが、咳が止まらず思うように息が出来なくなり、うずくまったまま倒れてしまう。 <現代>  自分の中にある記憶の映像を辿っていく希実。 「意識が薄れていく中で最期の瞬間、仁ちゃんといつか一緒に家族を作ろうって約束したあの時の景色が蘇って‥忘れちゃいけない、忘れたくないってその時にすごく強く思ったの‥」 「‥うん」 「その時のかおの思いが私に記憶として残ったのかもしれない‥だから、ただただ当然のように自分は睦と結婚するんだって子供の頃思ってたんだと思う」 「‥」 「睦に言ったらひかれるかなって思って言えなかった‥やっぱりひいてる?」 「え?いや全然だよ‥」 「良かった‥これで全部」 「‥うん」 「ちょっとスッキリした。ありがとう‥」  話しながらいつの間にかホテルへ戻って来た睦と希実。  入口で和志と未知音が待っている。  ホテルの部屋へ戻る四人、団らんのひと時を過ごす。  眠りにつく四人。  一年前から長崎で住むようになった睦だったが、あれ以来あの夢を見ることはなかった。今日の希実の話を聞き、少し思い出した睦。その日夢を見る。 <前世>江戸時代後期  京都へ向かった仁は仕事を終えたその足で京都の石垣という菜種製油所を探す。何軒も製油所を周り漸く石垣に辿り着く仁。そこでかおのことをよく知るという製油所の娘のさちと出会う。 「もしかして仁さんでおすか?」 「‥はい」 「ああ‥ かおちゃん、仁さんのこといっつも話してましたえ‥いつか家族になる言うて嬉しそうに話してましたんえ」  はっとする仁。その時の光景を思い出す。 「‥ かおちゃん、風邪を拗らせはって‥」 「え‥」 「咳の段々酷うなりはって‥お医者に診てもろうて、お薬も飲んで、何とか治ろうとかおちゃんもほんに必死やって‥せやけど、酷くなる一方で‥なんや感じてはったんか、あの日‥お布団で寝てはったはずやのに突然いいひんようになっとって‥皆で探しに行ったんどす」 「‥」 「‥そしたら山越えの道の麓で倒れてはって、見つけた時にはもう息がのうて‥」  ショックを受ける仁。 「何でこないなとこでって皆は言うてはったけど‥うちはかおちゃんは里へ帰ろうとしてはったんやと思っとります。あの身体で到底帰られへんやろうことは分かってはったんやろうおすけど、ちょっとでも近いとこへ行こうとしてはったように思っとるんおす‥」  言葉に詰まるさち。 「‥それからここまで運んで来てもろて、最期はかおちゃんが二年前に来た時に着てはった絣を着せて見送ったんどす」  涙ながらに話すさちに、黙って頭を下げる仁。  かおが眠っているとさちに聞いた小さな集団墓地を訪ね、手を合わせる仁。 「約束を果たせんくてごめん‥」  仁の心にかおと誓ったあの日の光景が蘇った。 「こん次こそは家族になろう‥絶対に‥」  仁、強く心に決める。  十数年後、仁は村の人達に惜しまれながら人生を閉じた。多くの人が悲しんだが、天国に行くことは仁にとっては、一人ではなくなることだった。温かさに包まれるように最期の時を迎える。  かおが迎えに来てくれたような気がした。 仁が「家族になろう‥」と言うとかおが嬉しそうに頷いた。 <現代> 「かお‥」  目を覚ます睦。一瞬どこだか分からなかった。 「あ、睦が起きた」  和志がタオルを持って睦を見る。  上半身を起こす睦。 「かおは?」 「顔?‥大丈夫だよ、カッコいいよ」 「あ‥違った‥希実は?」 「希実は俺に似たからな‥でも父親似の女の子は幸せになれるって言うし‥」  温泉の準備をしている和志。 「あ‥未知音と希実、温泉行ったけど睦どうする?」 「ああ‥行く」  起き上がる睦。  それから未知音が行きたがっていたハウステンボスへ四人で向かう。チューリップ畑が広がっている。  風車や綺麗な街並みに喜ぶ未知音と希実。  和志は未知音と二人でバスに乗りたいと言ったり、散歩したいと言ったりしたので、希実と睦は呆れながらも笑って二人にしてあげた。  睦はまだ夢のことがずっと残っていた。けれど希実には話さなかった。  暫く自分で考えたかった。  そうして四人は空港へ向かった。セキュリティゲート前で見送っている睦。希実が一度振り返って手を振った。そんな何でもない仕草にずっと意味があったことを思い知った。  飛行機の中。三人掛けのシートに和志、未知音、希実の順で座っている。疲れて眠っている和志。 「‥睦に瑠衣ちゃんにお土産渡してあげるよって言ったら、いい‥俺フラれたんだって言われた‥」 「え?‥そんなことある?瑠衣さんそんなことしないと思うけど‥」 「うん‥何とか元に戻れないのって聞いたんだけど、難しいかなって‥」 「‥あんなに仲良かったのに‥」 「うん‥ショックだな‥」  元々、未知音と瑠衣が先に仲良くなって、瑠衣が家に遊びに来てくれたのがきっかけだった。未知音も瑠衣を失ったような気がして、何だか傷ついたように胸が痛かったけど、睦には言えなかった。

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