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 ある日の午後、カフェでノートを開いていた。  ふと気づくと、ペンが止まり、テーブルのはしで半分ほど残ったカフェ・オレが冷めきっている。  どれくらい、ぼうっとしていたのだろうか。意識がぼんやりとして、まるで寝坊した朝のような気怠けだるさが頭全体を包んでいた。  静かに、大きくため息をつき、目頭めがしらんで、私は気づいた。  自分が何も憶えていないということを。  カチカチ、ボーンボーンと、カフェの大きな柱時計が鳴り始めた。  三時。  午後三時だろう。  窓から見える戸外こがいはまだ明るく、いい天気だ。  もう一度、大きく息をついてから、私は再び自分の頭の中を探ってみた。  しかしそこは空洞だった。自分の名も、なぜここにいるのかも、どこの誰であり何をするのかも、分からない。  ただ、目の前に、一冊のノートがあった。開いたページには、こう書かれていた。  やあ、おはよう、と。

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