紙とインクが必要だ。
私はレストランを出て、閉店間際の文具店に飛び込み、手持ちの万年筆に合うインクと、念のためノートの予備も買った。
それから空室のあったホテルに急いで宿を取り、部屋に着くなり机に向かってノートを開いた。
時計を見ると、夜八時を過ぎている。私の時間はあと十九時間だ。
十九時間もあれば、私は多くのことを書き残せるだろう。どうせ、書くべき記憶も、そう沢山あるわけではないのだ。
ノートを開き、新しいページに私はペン先をおろした。
今日から始まる、私の記憶を託すノートに、ありったけの想いと出来事を綴るために。
END