私は一体、これから何処へ行って、何をすればいいのだろうか。
ノートに記されていたのは、この銀行にある金の話のほかは、私が家族のいない身であり、こうなる前は闘病に明け暮れるばかりで、友人らしい友人もいないこと。職にも就いていないこと。帰るべき家もないこと。
今夜はどこかに適当な宿をとって、休むようにという当座のアドバイスだけで、締めくくられていた。
そして、この私の記憶と意識も、明日の午後三時ごろには消え去る予定だ。
それはあと一日の余命と、大して変わらないのではないか?
銀行のATMコーナーの隅に立ち尽くしたまま、私は呆然としていた。その姿があまりにも異様だったのだろう。紺色の制服を来た警備のスタッフが、厳しい目をチラリとこちらに向けてきた。
このままここに突っ立っている訳にもいかない。
私は追い立てられるように、また街へと流れ出ていった。
時計を見ると、カフェで気がついたときから一時間ほど経っていた。
たったの二十四時間しかない一生がもう、一時間も過ぎてしまったのだ。
私はじわりとした焦りを覚えた。
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