サマースプリンター・ブルー
私の推察〜⑴であれ〜

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 他校の彼女の件を知ってから数日が経つも、依然として、私は真相を確かめられずにいた。あれから、メッセージのやりとりをしたり、校内で話す機会もあったのだけど、どうしても訊けなかった。真実を渇望しながらも、けれど、脳をかすめる様々な可能性が私の口をぐっとつぐませた。もう何度も何度も同じ考えが、頭の中で堂々巡りしている。  私の推察。  ⑴ やはりただの噂。なんらかの勘違い。現に、これまでの彼との会話の中で彼女らしき話題は出てきていなし、そのにおいも感じなかった。見込みは高いと思う。  ⑵「うん、彼女いるんだ」とさらりと答えられてしまう可能性も、正直彼ならば否めない。考えたくないものだけど、その淡白な姿も態度も容易に想像でき、勝手に胸が軋む。  ⑴説を推す私は、松永くんにさりげなく家族構成を訊いた。お母さんが亡くなり、今は父、彼、弟の三人家族だと教えてくれた。つまり“実は姉だった”という線は消えてしまったが、しかしそれ以外のなんらかの理由があるのかもしれない。まだ望みは残っている。  そしてもし、⑵が実証された場合。彼は、音楽の趣味が合い、すすめた本を熱心に読み込む私のことを“よき友人”として、接してくれていたことになる。彼の口から彼女がいることを知れば、「そっか」なんて“よき友人”らしく笑える自信がまるでない。きっと今にも地団駄を踏み出しそうな、悔しさを丸出しにした顔で血の涙を流しているだろう。そんな嫉妬にまみれた感情を知られれば、彼と“友人”でさえいられなくなるかもしれない。  そう思うと、今のままでいたいと思ってしまう。⑴の希望を持ちながら、彼女の存在なんて信じないまま、ただ好きでいたい。「ただ目の前に存在している彼」だけを想っていたい。  好きだから、知りたい。  けれど知ることでもし全てが終わるのなら、知らないふりをしていたい。 「でも、それは現実逃避ってやつだよ。好きでい続けるなら、必ず知るときはくるよ」  ミッコの意見はいつも正しい。わかっている。先延ばしにすればするほど知りたい気持ちは増殖し、同時に言えない切なさも具体性を帯びていくばかりだということも。胸が痛すぎて目の前が真っ暗になる。こんなんじゃ部活だって身に入らない。来月末には大会もあるのに。せっかく記録も伸びているのに。  わかっているのだ。  このありふれた推察どちらの結果にせよ、自分が後悔しないためにも、私がすべきことも、伝えるべきことも。  という結論にまでは何度もたどり着くのだけど、しかし傷つきたくない私の臆病な恋心が、また37行前の私に後戻りさせてしまうのだった。

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