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 ……。  スタスタと歩いていく俺達。 「……シオさん、どうしましたあ? 元気なくなりましたねえ?」 「……なあ? お前何者なんだ……?」  俺は試練を2つクリアして思ったことを正直に話す。 「……えっ? ミカエラ様の忠実な僕、天使ザドキエルですけど……?」 「……何が目的なんだ……?」  ピタリ……とザドキエルは歩くのを止める。 「えっと……。貴方を天国に……」 「……それだけじゃないだろうっ!」 「……あちゃー……」  舌をペロリと出すザドキエル。 「その答え……。貴方が最後の試練をクリア出来たら教えましょう! ビシィ!」 「口でビシィ言うなっ!」  俺はザドキエルに指を刺し、ビシィし返した! 「ふふ……。そうそう、その元気です。元気があれば何でも出来ますよお!」 「お、おう……」  ホントこいつは不思議な奴だ……。  言ってることはメチャクチャなんだが、何か知らんが本質的な事を言ってくるのだ……。  本質的な事……。  何に対して……? 「はいっ! これで最後でーす!」  彼女が指さすドアの色は青色だった……。  このドアの大きさは……エルの身長と……。  俺はザドキエルを思わず見てしまう……。 「ふふ、最後の試練は貴方の本心を語れです―!」 「……」  俺は無言で青色の扉を静かに開く……。 「頑張ってください……ね……」  小声で俺に呟く、ザドキエルの声が聞こえたが何故かもう嫌味を感じることはなかった……。  ……。  意識が戻り視界が広がる……。  俺達は抱き合っていた……。  って誰と?  銀色の髪に青い魔法使いのローブ……。  ってエル? 周りをゆっくりと見ると……。  え? ここって、崖を上りきった最初の試練の続き?  てことはまた、ザドキエルか?  背中を触るが羽は……ない……。  地面もちゃんとした土だし、崖下を覗くと溶岩が見える……。  俺は急いでエルから離れる……。 「良かった……。本当に良かった……。シオが崖から落ちた時はどうしようかと……」  涙をポロポロと流す彼女……。 「あ……」  彼女の言葉が嬉しくて、思わず抱きしめてキスしようと思ったがトラウマが蘇ったのでヤメタ……。  ザドキエルの野郎にここに連れてこられた本当の目的を聞くまではな!  しかし本心を語れって何に対してだ……。  俺は目の前で泣きじゃくっているエルを見つめる……。  ……あ。  俺は今までの試練を思い出す……。 「あ、あのなエル……。俺さっき死にかけて思ったことがあるんだ……」 「う、うん……」 「俺、冒険者だし、いつ死ぬかわかんねーしさ……。だからコレ今貰ってくれよ!」  俺は急いでポケットに入れていた結婚指輪を取り出し、エルの指にはめる。  そして、金の指輪の中央にはめ込まれた透明なダイヤモンドがキラリと眩い輝きを放つ。 「え……?」  驚き思わず泣き止む彼女。 「……いや、ホントわな……。数か月先のエルの誕生日に渡したかったんだけど」 「……うん」  俺の顔を真剣にジッと見つめる彼女……。 「その……。ちゃんと言葉にして言ってなかったけど、俺はエルのことが大好きなんだ……。だから俺と結婚してくれよ!」 「……うん……うん」  俺の思いが伝わったのか、再び涙をポロポロと流すエル……。  それを見た俺は思わずエルをそっと抱きしめる……。  くそっ! これもどうせ試練の幻だろうが、彼女に会いたい本心は噓じゃないんだ!  ……。  ……ってアレ? ザドキエルの奴出てこないな……。  俺はありのままの本心をエルに伝えたんだけど?  俺はエルとしばらく抱き合った後、2人で火山から出て、緑がうっそうと生い茂った草原にたどり着く……。  しばらく2人で手を繋ぎ仲良く歩いて行くと、草原に爽やかな風が吹き抜け、さわさわと草むらが揺れる音が聴こえてくる。 「わあ……。風が爽やかで気持ちいいね!」 「ああ……そうだな……」  彼女も終始ニコニコと笑顔になっており、来た時とは違いなんだか機嫌がいい。  あーこの懐かしい感じ……流石にもう幻覚ではないだろう……。  俺は最後の試練を突破し、ザドキエルは約束通り俺を生き返してくれたのだろう。  エルと2人でさっきまでいた火山を見上げながら、俺は考え事をしていた。  ……結局ザドキエルの目的って何だったんだろう? 「ふふ……。貴方が死にそうになったのは怖かったし嫌だったけど……本当に良かったわこの火山に来て」 「え? 何で?」 「えっとね、ここの火山の名前ってミカエラ山って言うの……」 「ミカエラ……」  はて? 何処かで聞いた事あるような……。 「それでね……。この火山の火山口に来たカップルはミカエラ様の部下が愛のキューピッドになって、くっつけてくれるって町の冒険者ギルドで評判だったのよね!」 「……ミカエラの部下……キューピッド……」  あ……。  その時、爽やかな風と共にフワリと一枚の純白の羽が俺の目の前を静かに横切っていく……。 「頑張ってください……ね……」  俺の脳裏にはザドキエルが最後に言った言葉が静かにこだましていた……。

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