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「……はい! つきましたあ!」 「え? 今回は早くね?」  あまりのあっさり具合にビックリする俺。  さっきの試練と違って数分しかたってないぞ? 「まあ、一番簡単な小の試練ですからね」 「そ、そうか……」  ……じゃあなんでさっきは道を間違えたんだ?  い、いかん……悩んで頭にきたら俺の負けだ……。  サッサと試練をクリアする事だけを考えよう……うん。 「はい! 今回はこの扉になりますー!」  目の前を見るとピンク色の小さな扉が見える……。  ってこの扉、俺の腰下くらいしかないんだけど……。 「あの……。これくぐれんの?」 「大丈夫ですよー! あくまでも扉のイメージなんで」 「な、なるほど……。あとな、今回どんな試練になるんだ?」 「……貴方の心のテストになりまーす!」 「……なんかヒントがざっくりすぎだなー」 「じゃ、頑張ってくださいねー!」  手をぶんぶか振り、俺の言葉をまたもや無視する馬鹿天使。  もういいっ! 次だ次……。  俺は諦めてそのピンクの扉に手をかけ開く……。  ……。  アレ? ここは?  俺は周囲をキョロキョロと見渡す……。  ここは俺と彼女が住んでいる家。  そして俺の部屋だ……。  畳15枚分のスペースに木製の床、木製のベッド、本棚に木製のテーブル……。  そしてまた目の前に彼女が座っているが……。  えっ? ふ、2人いる……?  しかも青いワンピースの服装も肌の色も身長も何もかもが同じ……。  こ、これは……? 『はい! 今回の試練は「本物にキスをしろ」です! そこの部屋にある砂時計が下に落ちるまでに答えを出してください―! 以上っ!』 「えっ? ちょっとまっ……」 『あ、最後に超ヒント! さっきの私とのキスどうでした?』  ザドキエルの声はそれっきり聞こえなくなった……。 「えっ? しかもまたキスなん? 何故に?」  と思ったがテーブルの上にある砂時計を見るとあと3分ぐらいしか時間が無い!  うっそだろ!  しかし、ま、迷っている暇はない……。  本物を探すしかねえっ! 「2人に質問っ!」  俺は俺と彼女しか知らない共通の話題を次々と出していくが……。  2人とも全部回答は同じでかつ、正解……。  しかも声や身振りなどのクセも一緒……。  わ、わかんねえ……。  砂時計が残り1分を切る……。  もうどっちも本物そっくりだし、片方にキスしたら試練クリアなんじゃないかなと思えてきた……。  これ一番な簡単な試練みたいだしな……。  よし、じゃどっちにキスするかだな……。  と、この時俺はザドキエルの言葉をふと思い出した……。  「さっきの私とのキスどうでした?」か……。  正直、唇は柔らかくて気持ち良かった……。  抱きしめた時に女性特有のいい香りもしたしな……。  羽も柔らかかったし、えも言わぬ触り心地だった……。  ……でもなあ、それでもエルへの罪悪感でいっぱいだったんだよ。  なので、叫んで悶絶した。  同じ顔、同じ髪色、同じ目……。  でも、俺の好きな……俺の知っているエルじゃないから……。  彼女の事を本当に大事にしたいからキスもしていなかった……。  だから、だから俺は自分の行いに、過ちに激怒したんだよな……。  ……あ、そっか……。  これが答えだったんだな……。  俺は彼女達を見つめながら砂時計の砂が全て下に落ちるのを静かに待つ……。 「ごめん……。俺が好きなエルはここにいないと思うし、貴方達ではないんだよな」  ……砂時計がサラサラと音を立て全て綺麗に下に落ちる……。    ……。  目の前にいつもの見慣れた風景が広がり、真正面にはザドキエルが笑顔で立っている。 「正解でーす! よく出来ましたあ!」  彼女は屈託のない笑顔で俺の頭を優しく撫でるのだった……。

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