The Heart of the Tree
2 天狗様から授かりし能力

作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

 俺は人からよく「理屈っぽい」と言われており、世の中で起きている出来事や現象を「こういう理由でそうなった」とか「原因としては○○であることが推定される」とか「珍しい現象ではあるが1%の確率で起きる可能性はあった」という感じで、頭の中を整理しないと気が済まない性格だ。  そんな俺が自身の特殊能力を頭の中で整理することは極めて難しいことだったが、俺なりに一応の整理が付いている。まあ、正確には無理矢理付けていると言った方が正しい。  俺の能力は、我が一族に伝わる遺伝的な能力だ。言い伝えによると千年くらい前、俺のご先祖様が山中で大怪我をして動けなくなっていた天狗てんぐ様を家に連れ帰って介抱かいほうしたお礼として、天狗様から授けられた能力らしい。  ここで、人間にそんな特殊能力を授けられる天狗様なら、「大怪我をしても自分で治せるのでは?」という疑問が生じるが、天狗様は能力が発揮できないぐらいの大怪我をしていたのだろうと理解している。  この特殊能力は我が一族であれば誰でも授かるというわけではない。血がつながっているというのは絶対条件のようだが、能力者の発生はランダムで、俺と父は能力者だが祖父は能力を持っていない。  また、本家筋ほんけすじに生まれた者にしか発生しないそうで、能力者であっても次男や三男であるがために本家の家督かとくを継がなかったり、女性で嫁に行ったりすると、その子供や孫が能力を持つことは無いそうだ。これは科学的な説明ができないのだが、そもそも特殊能力自体について科学的な説明ができないので、そういうものなのだと理解している。  現在の能力者は、俺と父と大叔母の3人だけだ。ちなみに能力者は我が一族以外にも存在し、世界中にいるらしい。俺は一族以外の能力者に会ったことが無いが、父は会ったことがあるそうで、日本だけでも100人くらいの能力者がいるという。  木の精霊は全ての樹木に宿っているわけではない。よく大木や老木には魂が宿ると言われるが、正にそのとおりで、町のシンボルツリーになっているような樹齢の古い樹木には精霊が宿っていることが多い。しかし、これも樹木によって差があり、樹齢100年程度で精霊が宿る樹木もあれば、300年を超えても宿っていない樹木もある。 「木の精霊」と「木の神様」の違いはよく分からない。御神木とされる樹木も白いオーラをまとっており、見た目に違いは無いのだ。ただ、神社の御神木は話し掛けても無言の樹木が多い。時々、挨拶には応じてくれる御神木もあるが、多くを語ることは無い。  御神木以外の精霊の宿る樹木に「木の精霊と御神木は違うのか?」と何度も尋ねたが、聞いてはならぬ質問らしく、答えは「さあ」とか「分からない」というものばかりで真相は不明だ。  木の精霊は人間にパワーを分け与えることができ、樹齢が多いものほど強いパワーを持っている。時々、大木や老木そのものや、生えている場所がパワースポットとして、テレビや雑誌で紹介されることがあるのはそのためだ。パワーを貰うと気力、体力が充実し、運気が上昇する。  ただし、木の精霊は誰にでも等しくパワーを分け与えるわけではない。木の精霊は自分に近付いた全ての人間の心を感じ取るので、善人にはより多く与えるし、悪人にはパワーを与えない。その点は御神木とされる樹木も同じようだ。  木の精霊が人間にパワーを与える時には、精霊の周りにあるオーラがまるで水が流れるかのように人間の方へ移動し、全身を包み込むようにして、オーラが体に染み込んでいくのだ。勿論それは俺のような能力者にしか見えない。  木の精霊も訪ねてきた人間に「わー、立派な樹だね」と褒められたり、「ありがたい」と拝まれたりすると気分が良いらしく、明らかにパワーを多めに与えている時がある。パワースポットを紹介する記事を見て訪ねてきた人間が、パワーを目当てに幹をベタベタ触れば、木の精霊も気分を害するらしく、全くパワーを与えないこともある。このように木の精霊には人間臭いところもあるのだ。  なお、木の精霊に近付いたり、幹に触れたりする方がより多くのパワーを受け取れるが、木の精霊の中には根元を踏まれたり、幹を触られるのが嫌いなものも存在するので、必ずしも近付いたり、触れたりした方がよいとは限らない。

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません