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 彼女は一言でいうと、まるで天使だ。 決して褒めたわけではない。最大の捻くれた嫌みだ。けれど初めて出会った時から、何かが変わるような気がした。纏う空気が似ているからだろう。親近感というか、心の奥底に眠る本能が目覚めたような感覚だ。  けれど、彼女はとにかく話しづらかった。会話が思うように成り立たないので、まるで虚像か偶像と話しているみたいに思えてくる。もしかすると、本当にそうなのかもしれない。彼女は存在していなくて、俺が勝手に生み出した蜃気楼で。そう考えると少しだけ心が楽になる。  名前は清花《きよか》と言った。  とても似合っていると思う。彼女の説明をすると、どうも曖昧で不自然な話になってしまう。また店に来るだろうか。舞い散る花弁を掴むように、ふわりと現れてふわりと消える。 「君は、恋愛の不適合者だね」  欠陥品の俺を、そうやって表現する人に出会ったのは初めてだった。小さい頃から熱の帯びた感情を持った事がなく、常に心のパラメータは0を指していて、人の温もりに触れてもプラスチックのような自分。表現としてはぴったりだ。 清花が店に来たのは、つい3日前だった。

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