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「顔が綺麗でも中身に難が合ったら、それってただの面倒臭い男じゃん。あーあ、早く店辞めてくれれば良いのに」 「何いってんの。最初はイケメンと同じバイト先で喜んでたじゃん」 「いくらイケメンでも、彼は駄目だよ。人形みたいに感情が無いし、何を考えているか分からないから怖いし」  そう言ってケタケタと甲高い声で笑っているのが響く。耳をそっと塞ぎ、そのまま店から出た。  これまでの人生で、人から好意を向けられる回数は多かった。「お前は恵まれているよ」と大学の友達が言ってきた。確かに苦労せずに知り合いが増えたり、人の輪の中に入りやすい経験はあった。けれど同時に嫌われる回数も人より多いように思える。  好きと言ってくる相手は、決まって最後には嫌いと言ってきた。自分はこんなにも愛を注いでいるのに、どうして返してくれないのか。そうやって見返りを求めてきては、俺を加害者扱いした。  顔が良いからって調子に乗ってるんでしょ。相手が自分を好きになるのは当然と思っているんでしょ。そうやって批難してくる。どの攻撃に対しても、何も答えられない。  まあ、仕方が無い。問題なのは、好意も敵意も、全てに対して俺は何も感じられないという事だ。人からどう思われようと、好かれても嫌われても興味ないのだ。壊れたネジは、いくら叩いてみた所で元には戻らない。  相手に期待もせず興味も持たず、そして澄ました顔で立っているだけ。まあ、嫌われても仕方が無いかと諦める。そしてふとある考えがよぎる。そろそろ新しいバイト先でも探そうかと、軽いため息を吐いた。

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