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 その青年は朗らかな笑みを浮かべた。 「いらっしゃいませ」  どこか神秘的で端正な顔立ちをした彼は、漆を紅でなぞるように、つるりと形の良い唇を上げる。独特な雰囲気を持つ為か、すらりと長い足から細くて滑らかな指先まで、見る者の興味をそそる。  焦げ茶色のエプロンを身に纏い、ふんわりとコーヒーの香ばしい匂いが漂わせる。店内は女性客が大半を占めており、男性客は肩身が狭いのか、目を泳がせて熱くて苦いコーヒーを啜っている。 たとえ同性であっても、彼の美しさには驚かずにはいられない。不意に目が合うと顔を赤らめて伏せてしまう。  青年は気づいていた。皆が自分に向ける視線が異様であることに。そして自分自身も異様の塊であるということに。 彼はその後、とある運命の女性と出会う。彼女との出会いによって、悲劇と喜びの幕が上がろうとしていた。

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