向日葵みたいに君が好き
《小学二年生》第九話
「つかさは優しいからねえ」 母さんがそう言うと、父さんが言った。 「優しいだけじゃ良い人で終わり」 「パパ、どういう意味?」 余計なこと言わないでよという目で母さんが父さんを見ているけれども、母さんは止めるだけ無駄だとわかっている。 僕はこういう時の父さんが嫌いだけど嫌いじゃない。 「優しいだけじゃ、都合のいい人で終わっちゃうんだよ」 母さんがため息を吐きながら妹の保育園バッグを整理している。妹が「ママ、にーにどうしたの?」と耳打ちしているのが聞こえてしまっている。 お転婆な妹が小学生になったらどんな風になってしまうのだろうと今から恐ろしい。 「パパ、もっと詳しく!」 「つかさが優しいから、みんな揶揄うんだよ。揶揄って遊ぶのにちょうどいいってこと。怒らないからさ」 「うん」 「つかさが優しいから、遊ぼうって言ったら断られないと思っちゃうんだよ」 「え?」 「ちょっと、つかさに変なこと吹き込まないでよー!」という母さんの声は男同士無視する。 「きちんと自分の思っていることを説明しないと、誰かが傷付いちゃうこともある。好きな子がいるなら尚更」 僕が考え込んでいたら、父さんは最後に得意げに言った。 「かっこいい男というのは相手を傷付けずに自分の意見を伝えるものだ!」 僕が知っている限り、父さんは自分で言った通りを出来ていないからかっこいい男ではないようだ。 何故なら、常に母さんを怒らせたり呆れさせたりしている。 父さんはきっと母さんの前でかっこいい男でいようと思っていないのだろう。 今でも父さんは良い男に向かって成長することなくあの頃のままである。
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