プライドと言う名の服を脱がして
終わりからのはじまり

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⁂  学園祭の日。  ……前の高校の、だけど。  私はありのままの姿で前の高校に顔を出すことにした。  フリフリひらひらなピンクのドレスは、絶対に目立つだろう。  一緒に歩く英寿や早紀子も地味で、イメージと違うと思われるだろう。  だけど構わない。  私は私だから。 「大丈夫か? おなか痛くないか? 美憂」 「ううん。晴れ晴れとした気持ちだよ」 「ならいいけれど」  早紀子は何も聞かずについてきてくれた。  私たちは校門をくぐる。  そこで、私が馬鹿にしていたあの子たちが目に入った。 「あれ、マウントマドンナじゃない?」  その子たちとは別の子がヒソヒソ言った。 「コスプレ? 何でドレス?」 「さあ……?」  皆が怪訝そうな目で見てる。  だけど私はその横を無言で通り過ぎる。  そして叫んだ。 「在学中は本当皆にマウントとって、ヤな思いさせてごめん……! 反省してるから……! 許してとは言わないけれど……! それだけ、言いに来たの。私、本当後悔してる。ごめんなさい……」 「美憂」  私が馬鹿にしたあの子は私の顔をしげしげ見ていった。  そして。 「変わったね、美憂」  そう言って、微笑んだ。  私は言葉にならないまま、涙を流して。  さようなら、とだけつぶやいてその場を去った。  ……マウントマドンナは、卒業できただろうか?  ふと気が付けば英寿と早紀子が後を追いかけてきていた。  人気のない場所で、私は足を止める。 「よく頑張ったな、美憂」 「過去の過ちを謝れるのはすごいよ、美憂ちゃん」 「……ふたり、ともぉ」  気を張っていた私は思わずその場にしゃがみこむ。 「すごく、勇気を出したな。えらいぞ、オレの美憂」 「うわああああああああああ」  子供のように、私は泣きじゃくった。  そこにプライドなんかなくて。 「どうして、もっと早く素直に生きれなかったんだろう」 「まちがえなきゃ、人間は気づけないっていうだろ」 「でもさ。私。本当は、あの子たちとも仲良くしたかった……」 「……なれるかもしれないよ」 「え?」 「ほら、そこ、さっきの子がのぞき込んでる」 「……!」  私がさんざんマウントを取って馬鹿にしたあの子が、そこにいた。  心配そうな顔で私を見るなんて、とんだお人よしだ。  あんなに嫌な思いをさせたのに。  私はその子の名前を呼んで駆け出した。 ⁂  あの子の連絡先を改めて手に入れた。  傷つけて、嫌な思いをさせた私がいじめたような、あの子。  すぐに元には戻れないのはわかってる。  そもそも元の関係は歪だったと思う。  ……それでも、歩み寄れるなら。  嫉妬心で狂うほどの絵を描いたあの子と仲良くなりたい。  今度は素直に、絵をほめたい。  素直に、正直に対話したい。  それがたとえ恥ずかしい言葉であっても。  私はそれを、受け入れて伝えていきたい。  言う側が恥ずかしい誉め言葉は、相手にとっても恥ずかしくなるほど嬉しい言葉だから。  伝ええば、距離も縮めれるわけで。 「よかったな。美憂」 「うん。嬉しいよ。英寿……ついてきてくれてありがとうね。二人とも」 「別に。恋人だし」 「友達だし。むしろあたしと美憂ちゃんは親友でしょ?」 「そうだね。親友だね……」  ずっと、本当の親友も友達もいなかった。   自分がそうなるように生きてきたから。  当り前なのに、不満に思っていたね。  馬鹿な私。本―当に……馬鹿すぎる私。 「あたしも、美憂ちゃんに負けずに声優目指してみる」 「声優が夢なの? 早紀子」 「地味なのにかわいい声ってよくいじめられたんだけど、それを武器にしたいなって思ったの。そうすれば、自分を好きになれるでしょ」 「そうだね。そういう思考回路はいいと思うよ、早紀子」 「だよね。あたしもそうおもうよ美憂ちゃん」  早紀子の個性的で優しい声なら、きっと人気者になるだろう。  頑張れる子だとも思うし。仕返しじゃなく、馬鹿にされた場所を長所にするなんて、素敵だ。さすが早紀子だ。前向き。 「私も負けない! 頑張るっ! 超頑張る!」 「一緒に高めあっていこうね。美憂ちゃん」 「うん。そうだね、早紀子。もちろん英寿も」 「……母さんと、美憂を養えるようになりたいからな。オレ。そのためにはいい仕事につかないとな。頑張るぞ!」  気合を入れてこぶしを突き上げる英寿に私はにっこりする。 「残念だけど私養われる予定はないよ? 英寿」 「!? 結婚はナシなのか!? 美憂……」  青ざめる英寿。思わず吹き出す私。 「違うよ。結婚はしたいし一生傍にいたいに決まってるじゃん? 私、英寿大好きだもん」 「え? え? ええ?」 「だけど、寄りかかるような生き方はいやだから、私は自立して生きる。自分のことをちゃんとできないままで人の道しるべに離れないから」 「な、なるほど」  ビックリした後に、英寿は大きくため息をついたので、私は笑った。 「笑い事じゃねーし」 「何言ってんの。私が英寿と離れたいわけないじゃん」 「本当素直になったな」 「その方が惚れなおすでしょ?」 「……まあ、そうだけど。自分で言うかよ……」 「うん。自信あるから」  私は胸を張っていった。  意地を張っても無意味だって痛いほど体感したし。  そりゃ世の中素直なだけでは生きてけないかもしれない。  だけど。 (……素直になる勇気なしじゃ、何者にもなれないし?)  自分に踏み込む勇気。それこそが、子供から大人になる境界線な気がする。  でも私はまだまだ子供だから。  だけど青春はまだまだ続くし。  急いで大人にならずにいろんな経験を積んで青春を味わいたいと思う。  酸いも甘いも嚙み分ける、なんてカッコつけたことは言わないけれど。  挫折しても立ち上がって見せるよ。絶対にね。  私は負けない。自分にだけは負けない。負けちゃいけない。 「ねえ、英寿。早紀子、どこか遊びに行かない?」  笑顔で私はは二人にそう尋ねた。青い空が反射して二人の顔がまぶしく光った。 「どこにだよ……疲れてないのかよ美憂は」 「カラオケ? ゲーセン? プリクラ? 何をするの、美憂ちゃん」  二人は不思議そうに私に尋ねた。    昔ならきっとマウントを取って中身を見ようとしなかったタイプの二人。  でも、今は大事な彼氏と親友で、かけがえのない存在だから。  傍にずっと、いてほしい……青春を一緒に過ごしたいと思うから。 (マウントなんか取ってるより、相手のいいところを探すほうが絶対よいよね! あらばっか探すなんてつまらない生き方はもうしない。絶対しない)  目の前で笑ってくれる友達を、大切にしていきたい。  ずっとそばにいたい。  だから私は笑顔でこう言った。 「ん、決めてない。迷ったらその時みんなで考えて決めよ。青春なんだからさ!」  二人はにっこりとほほ笑んで頷く。 「そうだね! 美憂ちゃんっ」 「美憂、オレの青春はお前もんでもあるんだからなっ」  私はその言葉に笑ってこう返す。 「青春はみんなのものだから」 「……確かに、そうだな。どんな奴にも、青春はあるよな。美憂」 「私、精いっぱい楽しむよ。『私の青春』をね?」 「ああ。楽しんでいこうぜっ」 「美憂ちゃんの青春、楽しみだなぁ」 「私も! 二人との青春楽しみ!」  私たちの青春は、これからだ! END

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