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爆弾拾いがついた嘘
「私、絶対死ねないんです」  かつて不発弾の爆発事故で従兄を亡くした女子学生、冴島一希。悲壮な覚悟を胸に、一流技術者への弟子入りを志願する。目指すは、不発弾の処理を担う民間業者。命がけの職業であり、女性の前例はない。 「お前をただ働きの使いっ走りに任命する。感謝しろ」  門前払いをくつがえし、無愛想な男のもとで住み込み修業を始める一希。十一年前に従兄の命を奪った「サラナ」の解体にも挑むが……。 「お前が言う『罪』ってのは何のことだ?」  師匠に動揺を見抜かれた一希は、涙ながらに爆発事故の経験を告白。自分のせいで従兄が死んだという罪の意識と、体に負った傷痕は今も消えていない。師匠は一希に責任はないと明言し、厳しくも親身に指導を続ける。  周囲の人々に支えられながら、自分のコンプレックスや偏見とも向き合う一希。徐々に弱みを克服し、人の手を借りる柔軟性も身に付けていく。  二年の修業を経て、師弟の関係はより親密なものへと育っていたが、二人には別れの時が訪れる。  ついに処理士となった一希は、絶体絶命のピンチのさなか、思いがけず師匠と再会。重傷で意識が遠のく中、師匠の出生の秘密と本心を知り……。  二つの血をめぐる硬派な人間ドラマ。師弟の絆と淡い恋。そして、苦い嘘。 【希望的エンドです】 【リアリティ、心理描写、没入感に定評あり】 【小説家になろう、カクヨム、アルファポリスにも掲載しています(別バージョン含む)】 【カバーイメージ作成:あさぎ かな様】
6月になれば彼女は
「これはね、わたしは生きてるんだって実感するためにやってることよ。痛みを感じることも、流れ出る血をじっと見つめることもね。逆に言えば、わたしが死なずに生きていくためのおまじない……」 陽ちゃんは、僕の従姉だ。歳はたしか四歳上。彼女は子供の頃から秀才で、地元の進学校から北海道の国立大学にすんなりと入ったけれど、大学四年生の夏休みに帰省してきて、そのまま大学に戻らず結局退学した。 彼女はそれからあしかけ三年間、家に引きこもっているから、今25歳になっているはずだ。 陽ちゃんは、広い場所や人混みが苦手だ。そんな場所で発作を起こした彼女を僕はこれまで何度か目にしている。 最近はその症状もかなり良くなっていて、こうして自分で車を運転して、たいていの場所には出かけられるようになっている。 ただ、人ごみや広い場所に一人で出かけるのは今でも苦痛らしく、そんなとき彼女はお供を必要とする。 お供役の声のかかるのが主に僕だ――。 短歌もテーマの一つとなっており、素敵な短歌をたくさん掲載しています。短歌好きの方、短歌だけでも拾い読みしてって下さい。 ◆本作に掲載の短歌は、『ヴェーチェル 夕べ』アンナ・アフマートワ(工藤正廣 短歌訳)から掲載しています。