#ダーク の作品

ハッピーレクイエム
「わたしはかれを殺し、かれはわたしを救う。これより半年後のことだ」  19歳女子大生・朝野聖子の神はすでに死んだも同然であった。それは聖子自身にとっても同じく、自らの死も目前だろうと自覚していた。  高校時代、父親が会社帰りの列車内で亡くなり、鉄道会社に巨額の賠償金の支払いを命じられた時もそうだった。  それまで目指していた法曹界に嫌気が差し、理転ののち進学した工学部でヒトクローンを造り、聖書と異なる現実を神に突きつけようと(もしくはそのことで天の裁きによって絶命することすらも期待し)目論んだ時もそうだった。  恋人の死の間際、うつ状態になってからでさえ(むしろ精神を失調してからの方が強いかもしれないが)、自らの死期が早まることを期待し続けた。  救済などありはしない。ただ生まれ、ただ消えるだけの感動も意味もない人生を手際よく終わらせることが唯一、自由意思に基づいた、聖子自身への保釈だった。 『  茫洋とする意識の中、わたしはまた死ぬのだろうと思った。    ――やけにまぶしい。天国なのだろうか。それとも地獄から天国を見上げているだけなのだろうか。そのときわたしは真冬だというのに一糸まとわぬ姿でその空間に浮遊していた。自由落下のさなかであるかもしれない。やがて眠気に見舞われる。   「ハッピー     」 』