#ライト文芸 の作品

非汚染の瞳
 八歳の誕生日に母親に捨てられ、見知らぬ男にロリコン専門の売春クラブに売られた少女がある日体調が悪い中接客していると、突然部屋に入ってきた男が客を殺してしまう。この先も地獄しかない人生に絶望していた少女は彼に自分も殺してくれるよう頼むが、何の気まぐれか男は少女をそこから連れ出してくれた。連れて行かれたのはどこかの島の廃墟の中に立つ、ビルの屋上に作られた森の一軒家。そこはかつてのビルのオーナーが自分個人のために作った家だった。  男はヒトリと名乗り、少女をモリと名付けて体調の悪いモリを看病してくれるが、モリが売春クラブで良く稼ぐ子であったためか、店へ連れ戻そうとする者達が何度もやって来る。その度にヒトリが守ってくれるが、何故守ってくれるのかモリにはヒトリの真意が分からない。ヒトリの方も、クラブの稼ぎ頭の女の子を取り戻そうとするには割に合わないことをしかけてくる相手に疑問を持つ。  狙いは実はモリではなく、モリが持っていた客から預かったというペンダントの方ではないかと調べ始めるが・・・・・・。  廃墟の島で、平凡な日常を望んでも手に入れられなかった二人が、不器用な形で互いに歩み寄り、埋められない孤独を埋めていく物語。    捨てる物と拾う物の選択を繰り返しながら、人は生きていくのだ。