中学時代、蔵田あたるはマウンドで躍動していた。中学二年生の時に全国大会で準優勝を成し遂げことでオールジャパンの世代別代表メンバーにも選出され一気に全国区の有名投手に成長する。
チームの二番手投手で、サウスポーの百瀬和多留とは良きライバル同士であり親友でもあったがわたるの父親の転勤を理由にチームを離れてしまう。あたるとの別れ際にわたるは二人しかいないグラウンドのマウンドの上で約束を取り立てた。それは県内でも屈指の強豪校である京成大甲府高校で再会し共に甲子園を目指すことだ。二人にとって甲子園は夢だったがあたるは過度の練習と連投が原因で肘を故障してしまう。野球の未練を断ち切るため必死に勉強して入学したのは県内でもトップの進学校武田北高校だった。そんな時九人しかいない野球部の女子選手、仙崎菜穂は執拗にあたるを野球部に誘ってきた。
進学校の弱小野球部で、甲子園を目指して奮闘する部員たちとかつての天才ピッチャー、そして公式戦に出られなくとも野球を続けるたった一人の女子選手は、高校野球で何を学び、何を得ることができるのか、高校野球で甲子園に行くことよりも大切なこととは。青春を野球に捧げた球児たちの情熱と価値観がぶつかり合うありきたりな野球小説。