テレビ局で順調に出世していた加藤哲夫(かとうてつお)が、突然に退職をした。このまま局に残れば重役待遇は間違いないのに、新事業を立ち上げるために加藤は会社を辞めた。その際に加藤とは学生時代からの友人であり放送作家をしていた高遠稔(たかとおみのる)が、新しい仕事をしないか、と誘われ、高遠もそれに承知する。
だが、その新しい仕事というのが『デジタル・アーカイブ』事業という耳慣れない仕事で、高遠が話を聞く限りは、功利主義的なイメージを抱いている加藤には似つかわしくない職業だった。
過去に残っている紙の記録媒体や、ビデオテープなどを、デジタル化して保存する、ある種、文化事業のような仕事がデジタル・アーカイブ。そんな仕事に何故テレビ局では敏腕ディレクター、凄腕プロデューサーとして視聴率主義を取り名を馳せた加藤が携わろうとしてるのか? 高遠には謎だった。