ハレ・クール!――私はこの世界の異分子で、だから、跳ぶんだ。
どこにも居場所なんかなかった。あなたに会うまでは。――憧れと初恋と友情で「生きる」が輝いていく。
中学2年生の瀬乃音晴麗(せのお・せいら)は、派手な名前とは真逆に胸まで垂らした髪で顔を隠し、どこにも居場所を見つけられないでいた。
ある日、大道芸をする男子高校生「シショー」と、「パルクール」と出会う。
その出会いが晴麗の世界を変えていく。
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空を踏んだ。
抜けるような青と立ちあがる入道雲を私の足がたしかに踏んでいた。
それはほんの一瞬、計ってみれば一秒にも満たないような時間だったのかもしれない。次の瞬間には私はアスファルトに無様に転がっていたのだから。
強打した背中が痛むのを他人事のように感じながら、走り寄ってくるシショーの足音を背中で聞きながら、私は空に向かって手を伸ばす。
あの一瞬。
地面に縛りつける重力から、私は、自分自身の力で自由になった。
「ハレ」
私は大嫌いだった自分の名前をつぶやく。
「あんた、意外とそんなに悪くない」
たぶんあの瞬間が、私が私を許せた、十四年の人生で初めての瞬間だった。
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(本文1ページより)
*エブリスタ、小説家になろうでも連載しています。