#大学生 の作品

サクラビルにて
正直な空白
No Image
就活に失敗し、バイトもクビになった大学四年生の「私」、高柳メグミ。通称タカメ。昔から真面目でガリ勉だがどこか生きるのが不器用だ。三月、次の年の就活が始まろうとしている時期。卒業を前に晴々した顔でキャンパスを歩く同級生たち、就職してエリートコースを歩んでいる元彼の噂、連絡を取りづらい両親――。就職浪人が決まり、自分だけが前に進めていない絶望感を抱きながら、ある夜、誰もいないはずのビルの屋上で懐かしいあだ名で呼ばれ振り向く。そこにいたのは、小学校の同級生・ナルセトモロウだった。 デタラメな関西弁を喋るお調子者で口が悪いが、どこか憎めない性格のナルセ。ひょんな再会から、あまり乗り気でなかったが飲みに行くことになり、つい就活で失敗したことをナルセに話してしまう。そしてナルセが友達と開発したというアプリを通じた仕事を持ちかけられる。それは「お金はあるが忙しい人」と「時間だけはある暇人」のマッチングアプリだった。そこでは、天才プログラマーのサンシロウさん、シングルマザーでジム通いが日課のマイペースなレミちゃんなど個性的な面々が、ナルセと共に働いていた。 依頼は人気店の行列待ち、病院の順番待ち、犬の散歩など簡単なものばかり。 今すぐ就活を継続する気力もなくバイトもクビ。時間を持て余し自他共に認める暇人であるタカメは、軽い気持ちでアプリに登録する。そして依頼をこなしていく中で忙しく生きる、どこかが欠けた様々な依頼人たちに出会う。過酷な職場で働き本当は充実した私生活を送れていないのに、強い承認欲求に駆られ、SNS投稿用の「ばえる」写真撮影を依頼する、ナツ。仕事の成功のために病気の発覚を恐れて診察を避け続ける、アサコ。家を出て行った彼女が残した犬を不慣れながらも育て、帰りを待つゲームデザイナー、おかもん。母親との関係がうまくいっていないエリート会社員、ヒトミ――。 依頼を通し、ぶつかり合いながらも彼らと心を通わせ様々な人生に触れる中で、タカメは自分自身の中である変化が起きていることに気が付いていく。そしてタカメが最後に行き着く先とは――。一方、ナルセには、ある秘密があった……。 ※旧題「君がくれた時間を今、私は」を「正直な空白《しょうじきなヴァカンス》」に改題。 ※最終選考に伴い、改稿版として更新(2021.3.19)。 ※誤字脱字など含む一部表現を修正(2021.8)