#婚約 の作品

小瓶と墓標
 預けきることも、信じきることも、示し続けることも、誰にもーーーー  九歳の夏、由布子は事故で両親を亡くし、祖父母に引き取られ田舎へ越すことになった。  そこは旧家園村が絶大な力を誇る、田舎特有の閉鎖社会。  園村当主の一人息子・幸太に目をつけられた由布子は、そこから全社会から徹底的に爪弾きにされることになる。    そんな中、たった一人由布子を助けてくれた男がいた。  男の名は、園村孝宏。十三も年が離れている上そっけない態度の孝宏に最初こそ警戒した由布子だが、二人は徐々に心を通わせて行く。  孝宏は由布子にとって、祖父母意外に唯一自分をまともに扱ってくれる存在。  けれど、彼に心を預けきることはできなかった。  彼が由布子が姉のように慕っていた叔母・鈴子と婚約手前まで行った仲なのに、園村本家の圧力で引き裂かれた元恋人だったと知ってしまったから。  由布子、孝宏、鈴子。奇妙な三角関係が出来上がってから、少しずつ歯車が狂い始める。  秘めやかに回り出す悪意、底知れずうねる狂気、”園村”という家を縦軸に払い続けられる犠牲。  あと、たった一つだけ。  それだけをやり過ごせたていたら、きっと幸いでいられたはずなのに。  ※改行・空白なしでWord換算約199500文字に収まっています