夜、雨の日の渋谷。東京タワーが霞んで視える景色の中、一人の少年と出会った。
私たちは肩をくっつけてしゃがみ込み、窓にあたる雨音を聴くようになった。
二人とも何も話さない。時間など感じない不思議な世界に存在していた。
恋人同士でもない友達でもない。
あやふやな関係なのに、溶けてしまうほどに一つになれるのだ。
ラジオから流れるのは知らない音楽。
口ずさんでしまうのはなぜだろう。
雨の日に恋人になる。それでもいいかもしれない。
きっと雨が恋しくなる。
毎日が雨ならいいのにと思う。
さよならなんて浮かばないほど、どうしようもなく恋人になるのだ───。
愛する人を失った女性と愛を知らない少年の切ないラブストーリー。