その町は滅びた街の上にあった。黄金都市と呼ばれたその街で、三百年前自滅の戦争が行われたのである。人々は、その街を隠さなければならなくなった。かつて十五人の子供たちは、そこで秘密の探険を繰り広げた。しかし、町の地下にはいまだに跋扈する彼らの先祖の霊のほかに、オグという、人間の悪意の集合したいにしえの魔物がいた。
十五人の子供たちのうちの一人、ルイーズ=イアリオは、その十年後に再び暗黒の都市に赴く。そして、古き霊から一冊の日記を託される。そこには溢れんばかりの亡国への愛が書き連ねられていた。一方で、かの都に棲み続ける悪霊が、希望を託したその子孫が、上の町の破滅を目論みその代々の本懐を遂げようと動き出す。
だが破滅を志向するのは血の運命に絡みつかれた一人の生者だけではなかった。無数の存在が、その意思を持ち、動こうとするのをイアリオは感じていた。彼女は言い知れぬ焦燥と不安に苛まれ、自分が本当は何に突き動かされているのか知らず、それでも起きつつあることの一切を知らなければならないと感じ続ける。上の町,下の街での調査も限界に達したと自得した彼女は、ついに町から出て行くことを決意する。