#野球 の作品

それでも願いは届かなかった
両親を亡くし、たった一人の妹と離れ離れになりながらも懸命に野球を続けた結城信也…… プロに進み、最愛の人との結婚も決まり、幸せになることができると信じていたのに、最愛の人、明日香はがんに侵されてしまった。 願掛けのように投げ続けたその日、彼は完全試合を達成したが、それでも願いは届かなかった。 魂の抜け殻のようになってしまった彼だったが、妹彩香と、旅館白滝の女将、玲子の大きな愛によって彼は復活を果たす。 この玲子は、信也達の亡き母親の親友だった人で、夫を亡くし子供のいない彼女はわが子のように二人を愛してくれた。 そんな中、玲子の計らいで女優、唯(ゆい)華(か)との新しい恋が始まったかに見えたが、彼女は、突然アメリカへと旅立ってしまった。 その後も愛する人を亡くした完全試合男は悲劇のヒーローとして、女性との噂が絶えなかったが、そこには誤解されやすい信也の優しさがあった。 それでも、2年後、ある女医との結婚を決意した彼だったが、唯華が帰国することを知った彼の心は乱れ、それを知った女医は彼のもとを静かに去っていった。 成績の方はと言えば、その後10勝から12勝の間を行ったり来たりするだけで、特段の成績を残すこともなく、14年目を終えた。 ところが、プロ15年目に入ると、一度は退いていた闘将仲代達也監督が、62歳という年齢にもかかわらず、2年を限りに再び指揮を執ることになった。 これをとても喜んだ信也は、この年15勝、翌年は23勝を上げ、日本シリーズに臨んだがシリーズ中に倒れた仲代監督に日本一をプレゼントできないまま仲代は旅立ってしまった。 その年に引退した彼は、4年後、唯華と再会し、自分に和也と言う子供がいることを知る。父親として名乗り、息子に向き合うことはできたが唯華は結婚には応じない。 やがて唯華は子供がいることと、その父親が結城信也であることをカミングアウトして、再び二人が向き合い始める。 その翌年から監督に就任した信也は、2年目にして念願の日本一を手に入れ、達成感に満たされたが、報告に出向いた恩師であり、父親の友人であり、亡き明日香の父親である中野から自らの出生の秘密を聞かされ驚く。