ある日、私は月ヶ谷家執事を名乗る謎の女に拉致された。連れて行かれたのは鎌倉にある古い屋敷。月ヶ谷家？ 知らんよそんな一族……と思っていたら、女はとんでもないことを言い出した。
この屋敷の主人、月ヶ谷鞠華は源頼朝の子孫で、私にその身代わりになれっていうんだ。彼女の代わりにお見合いをしろって。気は確かか。できるわけがないでしょう。自分で言うのも何だけど、私は夢も希望もどこかに置き忘れた、フリーターのアラサー女だよ。地位なし。金なし。彼氏なし。夜な夜な男をだましては、高そうなお店でご飯をおごってもらってる。我ながら褒められた人間じゃない。名家のお嬢さんとは正反対の私だよ。どうなっても知らないよ。
だけど、私が身代わりをしなければならない事情が、そこにはあったんだ。かくして私の、月ヶ谷家での奮闘の日々が始まった。
月ヶ谷家執事、宇都宮美夜さんにどやされどつかれながらの、鞠華としての修行の数々。鞠華のふりしての偽デートやパーティー。鞠華を狙う、あやしい影。はたして私はバレずに月ヶ谷鞠華の身代わりを全うできるのか。
